LIVE REPORT

TOTALFAT "PUNISHER'S NIGHT 2021" LIVE REPORT!!

Report by 小林千絵
Photo by Taka”nekoze_photo”

 

2021.6.16
TOTALFAT “PUNISHER'S NIGHT 2021“@SHIBUYA CLUB QUATTRO


  コロナ禍、さまざまなアーティストが音楽を届けるために試行錯誤をしていた。その中でもTOTALFATは動きが早かった。自粛期間が始まったばかりでまだ人々が困惑の中にいる2020年3月に、新曲「Smile Baby Smile」を配信リリース。さらに2カ月後の5月には新曲「夜明け待つ」、7月にはそれらを含むEP「WILL KEEP MARCHING」、11月にはムラサキスポーツのキャンペーン用に書き下ろした「SCREAM ON THE BOARD!!」と、ものすごい速さで新曲を次々と発表した。そのスピード感そのままに、2021年1月には東名阪イベント「PUNISHER'S NIGHT 2021」用に、各地の出演バンドメンバーをゲストに招いた「Better Luck」を制作した。コロナ禍に置いて、ひときわ“音楽を止めない”という思いの強いバンドであったように思う。

そんな彼らが1月に開催予定だった「PUNISHER'S NIGHT 2021」。TOTALFATはこのイベントに向けて、仲間との再会を誓う曲「Better Luck」を制作し、来場者に配布する予定だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響により公演は延期に。そして6月に振替となった。念願での振替公演。東京はHOTSQUALL、名古屋はGOOD4NOTHING、大阪はlocofrankと、「Better Luck」の参加アーティストをゲストに招いて行われた。

東京公演のゲストはHOTSQUALL。彼らは「今日はアツくいこうぜ」(アカマトシノリ[Vo, B])、「心を解放して思いっきり楽しもうぜ」(チフネシンゴ[G, Vo])と初っ端から思いの丈を叫んでライブを封切り。ミラーボールがフロアを彩った「LIKE THE STAR」、勢いよく拳がつきあがった「YURIAH」、チフネとドウメンヨウヘイ(Dr, Cho)のコーラスが、アカマのボーカルと心地よく掛け合う「Life Is Short Movie」、客席から“ヘイー!ホー!”とのフレーズが聞こえてきそうなほど息ぴったりの拳が上がった「Let’s Get It On」と駆け抜けていく。


ようやく一息ついた3人は、「こんなときにパニシャをやってくれてありがとう!」とTOTALFATへの感謝を述べる。続けてチフネが「俺たちが歌ったあの曲が報われるのかな」と「Better Luck」を口ずさんだことから、3人はまるで楽屋のようなリラックスムードに。そして改めてチフネが「TOTALFATは長い歴史、喜怒哀楽を共にしてきた戦友。同じアティチュードでやれていることを幸せに思います」と戦友へ言葉を贈ると、「この曲で少しでも君たちの背中を押せたら」と想いを熱くした「Grateful Shout」でライブを再開。アカマの真摯な歌声とタイトな演奏が、まっすぐ観客の胸を打つ。20年以上TOTALFATと共にライブハウスのステージに立ち続ける彼らがライブハウスへの思いを歌った「Place in the sun」ではドウメンの繰り出すビートにあわせて、大きなバンドクラップが広がった。アカマが「人生を笑うということは、乗り越えていくことだ」とHOTSQUALLが楽曲やライブに込めた想いを改めて提示して、バンドはラストナンバー「Laugh at life」へ。シンガロングの代わりに、「人生を笑え」と描かれたタオルやたくさんの拳が客席を埋め尽くし、まるで歌声が聞こえてきそうなほど、会場は一体感に包まれた。


ホストのTOTALFATは場内がミラーボールで彩られる中、しっとりと「Give It All」でライブをスタート。Jose(Vo, G)のハイトーンで勢い付けると、Shun(Vo, B)が「始めようぜー!」と声をあげ、「晴天」「Welcome to Our Neighborhood」を続ける。


「やっと会えたね」と笑う彼らが、次に披露したのは「夜明け待つ」。“待ち合わせはライブハウスで”を合言葉に掲げている通り、ライブハウスや、ファンや仲間との再会を願った1曲だ。延期を経て、ようやく開催にこぎつけた「PUNISHER'S NIGHT 2021」で聴く「夜明け待つ」は格別だった。

歌い終えると、Joseは「この半年間、チケットを握りしめて待っててくれた大馬鹿野郎の皆さん、ありがとうございました」とうれしそうに感謝を述べ、観客は大きな拍手で応える。「HOTSQUALLを見ながら、中止じゃなくて延期にしてよかったと思った」とJoseがしみじみ語ると、Shunも「クアトロで平日で椅子があって、それでもパニシャを楽しみたいって人がこれだけいるって、最強じゃないですか!」と声を弾ませた。


Bunta(Dr, Cho)のパワフルなドラミングに乗せ、“パニシャ汁”が出ている中で、3人の演奏はさらに熱を帯びる。Joseが「(周りの人と)近づかなかったら踊り狂っていいんだよね?」と煽った「夏のトカゲ」のあとMCを迎えたShunは、「今一番必要な言葉って“人生を笑え”と“君はひとりじゃない”だよね」と、2組の歌詞を噛みしめる。さらに「俺らだけが正しいわけじゃないけど、音楽を求める気持ちは限りなく正解に近いと信じてる」と真摯に続けた。そして「Better Luck」へ。途中からHOTSQUALLメンバーがステージに登場すると、ステージもフロアも大盛り上がりとなった。ステージをあとにするHOTSQUALLメンバーの姿を目で追いながら、Shunは「この人たちが入ってくるだけでなんでこんなに明るくなるの?すごいよね」と興奮気味に語り、「いい曲書いたな、俺たち」「(コロナ禍以降も響く)くじけない日本人の歌にしていきたいね」と満足げ。彼らが自画自賛したくなるのも納得できるほどに、会場内は2組のポジティブなパワーで埋め尽くされていた。


余韻を味わうようにゆったりと届けられた「We’re Gonna Make a Bridge」のあと、JoseとBuntaが小さな声で「早い」と言葉を交わす。その言葉を耳にしたShunは「同じことを思っていた」と寂しげに言ったあと、「だからね、時計は止まってないんだよ。確実にちゃんと動いてるから。ライブをやって、フェスに出て思ったけど、やっぱり止まらないのが一番楽しいね」と改めて語る。加えて「何よりも自分たちが一番楽しむことを忘れないでいたい」「俺たちの世代で新しいエンタテインメントを作っていけたら」と、改めてライブへの思いを口にした。そしてバンドは最後に、“今一番必要な言葉”である<君はひとりじゃない>のフレーズが印象的な「 Place to Try」をプレイ。シンガロングこそできないものの、一人一人がこのフレーズを噛みしめていることが、ステージを見つめるファンの眼差しや力強くつきあがる拳からひしひしと伝わってきた。本編後、急いでアンコールに戻ってきた3人は、非常事態宣言下であったため、“クソ巻き”で「PARTY PARTY」を演奏し、「PUNISHER'S NIGHT 2021」東京公演の幕を下ろした。


この日、会場内でひさしぶりの再会を喜ぶファン同士の姿を何度も見かけた。まさに“待ち合わせはライブハウスで”、だ。TOTALFATは9月にライブツアー「“WE’RE BACK IN LIVES” Tour 2021」を開催することを発表している。ということで、次の待ち合わせは、全国のライブハウスで。


[SETLIST]
<HOTSQUALL>
01. Won’t let you down
02. LIKE THE STAR
03. YURIAH
04. Life Is Short Movie
05. Let’s Get It On
06. Grateful Shout
07. Rock soldiers never die
08. Place in the sun
09. Laugh at life

<TOTALFAT>
01. Give It All
02. 晴天
03. Welcome to Our Neighborhood
04. 夜明け待つ
05. Marching For Freedom
06. My Game
07. Phoenix
08. 夏のトカゲ
09. Better Luck
10. We’re Gonna Make a Bridge
11. Place to Try
12. PARTY PARTY

>>TOTALFAT Official Web Site