INTERVIEW

SATANIC PARTY 2022 対談 <JasonAndrewホンダリョウセイ × RYOSUKE>

Interview by Chie Kobayashi
Photo by Ruriko Inagaki
 

10月30日に渋谷にて行われるライブイベント「SATANIC PARTY」。これからのシーンを担っていくであろう次世代アーティストに、大舞台でライブする機会を設けた形だ。本イベントに向けて、JasonAndrewのホンダリョウセイ(Ba,  Vo)とRYOSUKE( FUCK YOU HEROES / TOYBEATS / HARDCORE FANCLUB / STEP UP RECORDS )の対談を実施。というのもホンダは横浜B.B.STREET、RYOSUKEは新宿ACB HALLで、それぞれブッキングを担当している。バンドマンであり、ブッカーでもあるふたりに、現在のバンドシーン、ライブハウスシーンについて語り合ってもらった。

 

──RYOSUKEさん、初めてJasonAndrewを見たときの印象は覚えていますか?

RYOSUKE:初めてはTHE FOREVER YOUNGのツアーで、横浜B.B.STREETだったよね。まだメンバーが変わる前で、青春パンクとかをやってた頃。

ホンダ:そうですね、まだ3ピースでした。

RYOSUKE:ただただTHE FOREVER YOUNGのことを好きなやつらで、クニのことも慕ってくれていたという印象で。そのあと新宿ACBにブッキングで出てくれたときに、かなりあーだこーだ話して。

ホンダ:そうでしたね。それで僕ら終電逃しました。高校生だったのに。

RYOSUKE:そうだった、そうだった(笑)。

──音楽性が変化したことに、リョウスケさんと話し込んだり、ACBに出たりしたことは影響はあるんですか?

ホンダ:いや、どうだろう。単純にハードコアが好きだったり、メタルコアが得意だったりするメンバーが増えたからとか、自分が聴く音楽が自然に重たいものになっていって。何かきっかけがというよりかは、だんだんシフトしていった感じでしたね。

RYOSUKE:そうだね。俺から見ていても、メンバーが変わったから音楽性も変わっていったんだろうなっていう感じ。

──JasonAndrewは今や、ホームのB.B.STREETはもちろん、ACBなども含めて、若手バンドシーンを牽引する存在になっていますが、認知度や人気が上がっているのは実感していますか?

ホンダ:なんとなく、ですね。「いいイベントに出させてもらうことが増えたな〜」という実感があって。俺らが見たことない人が曲を知っているような反応をしているのを見て「増えてるんだな」って。でもあまり気にしたことはないというのが正直なところ。もちろんライブをするためにお客さんを呼ぼうと頑張りますけど、増えているかどうかは気にならないというか。その日、その場にいる人たちが楽しんでくれるほうが重要です。

──JasonAndrewを長く見ているRYOSUKEさんは、今のJasonAndrewはどういうバンドだと感じていますか?

RYOSUKE:JasonAndrewを、というよりもリョウセイに対して思っていることなんだけど。バンドをやっていてブッカーもやっているっていう、俺と同じ立場のやつってあんまりいなくて。しかもブッカーでも求心力ないやつとかもいるしさ。そんななかで、リョウセイは求心力があって、ちゃんと横浜で自分と同じ世代のバンドを集めてイベントをやっていて、自分と似ているのかなと思っているかな。そのイベントにJasonAndrewが出るにしても出ないにしても、そういうやつがいるっていうことは、シーンを作るし、すごくいい存在だと思う。

ホンダ:ありがとうございます

──いろんな目で他のバンドを見ることになるんですもんね。

ホンダ:そうです。同世代のやつと比べたら耳はすごく良い自信もあるので。

RYOSUKE:しかもJasonAndrewは全国を回っているバンドだし。そういうことも大きいと思う。今、23歳なんでしょ?

ホンダ:はい。

RYOSUKE:自分も23歳のときにブッカーを始めたんだけど、23歳のときってブッカーとして無双状態だった気がするんだよね。変な話、今俺の世代のバンドを呼ぶとお金が絡んでくることが多いけど、23歳のときって「俺が呼びたいバンドだから呼ぶ」みたいなことでブッキングできるし、周りも出たいか出たくないかで判断してくれるんだよね。そのぶん大コケするイベントもいくらでもあるけど、それでも笑っていられる。そういう状態のブッカーがいるっていうのはすごく強いと思う。

──そもそもホンダさんがブッカーをやろうと思ったのはどうしてだったんですか?

ホンダ:バンドをもっと集中してやりたいから大学を辞めようかなと考えていたときに、B.B.STREETの店長に「だったらうちで働く?」と言われて。ありがたいと思って、その数日後には働いていました。

──ブッキングするうえで、声をかけるバンドの基準のようなものはあるんですか?

RYOSUKE:入り口は広くしておきたいから、出たいと言ってくれるバンドには出てもらってるかな。でも2回目以降も呼ぶ基準になるのは“会話ができるバンド”かどうか。カッコいいかカッコ悪いとかはどうでもよくて、話ができないやつらを呼んでもしょうがないとは思ってる。その結果JasonAndrewは終電なくなるまで話しちゃったわけだし(笑)。

ホンダ:俺はとりあえず一緒に演奏できる友達を集めようっていう感覚ですね。先輩後輩関係なく友達増やそうみたいな。

RYOSUKE:バンド同士だけだと知り合う幅が狭いけど、ライブハウスのブッカーだと一緒にライブをやらないバンドとも幅広く知り合えるから面白いよね。人脈が広がる。

ホンダ:本当に。F.A.D YOKOHAMAの夏目(浩二)さんに、以前「バンドの母数が減ってきている今だからこそ、音楽好きというだけで繋がれる場所があったほうがいい」と言われて。確かにブッカーとしてもバンドマンとしても、長く続けるにはそれが大事だなと思って。ブッカーとしてそういう場所を作れたらいいなと思っているところがあります。

──バンドが減ってきているというのは実感しますか?

RYOSUKE:減ったと思う。少なくとも自分がブッカーを始めた20年前から比べたら圧倒的に減ってる。当時は1日6バンドのブッキングを必ず埋めていたし、バンド数が多すぎて入れないということも平気であった。インディーズという言葉が流行っていたからバブル的なところもあったと思うけど。あとは……ライブハウスが増えすぎた。

ホンダ:それは間違いないですね。あとは、今は昔ほどジャンルレスにやってないような気がしていて。前はもっとハードコアもメロディックパンクもエモもあって……みたいなライブがいっぱいあったのに今はジャンル別のイベントが多すぎる。だから狭く感じちゃうというのもあるのかな。

──お客さんも出会いが少なくなっちゃいますもんね。

ホンダ:そうそう。そこでクロスオーバーしていかないと、マジで客がいなくなっちゃう気がします。それこそサタパとか「NERDS FEST」とかがあるから耳の肥えたお客さんがいますけど、ライブハウス規模で言うと、同じ色のバンドしかいないみたいなことが多くなってきていて。そりゃあ、同じジャンルで固めたほうが集客はいいですけど、その状態ってもう飽和状態というか。それ以上の盛り上がりはなくなっちゃいますから。

──バンドマンであり、ライブハウスでも働くおふたりの肌感として、バンドのライブに来るリスナーの数は増えていますか? それとも減っている?

ホンダ:コロナ禍になって、場所としてクラブが強くなったなと感じます。良い悪いは別にして、ソーシャルディスタンスなんか気にしない、潜ったシーンとして、口コミで広まってどんどん人が集まっている。もともとヒップホップは音楽として強かったから、遊びたいみんなはそっちにいっちゃうわけですよ。一方、ライブハウスに行くと足跡のマークがあって、お酒も飲めなかったりして。そりゃ離れていくよなって。

──でも自分たちはバンドをやっているわけで。そこに対する葛藤や焦りみたいなものはないのでしょうか?

ホンダ:俺らはどこでもやりますから。もちろんライブハウスを拠点に活動はしていますけど、クラブでやってもいいし。そこの壁は特にないですね。

RYOSUKE:自分は去年制約のある中でSTUDIO COASTでライブをやったんだけど「人はすげーいるけどなぁ……」って違和感を感じてしまったので、昨年音源も出したりでいろいろ誘ってもらってるけどほぼ断ってて。レコ発もやってないし。お客さんもこれだけ制約だらけ中なので今までのライブハウスの楽しみ方を知ってる人はそりゃ減るでしょって。まぁでもそれも少しずつ緩和されてきてて。なので、またライブハウスの衝撃を与えることさえできればそこは大丈夫だと思ってます。自分たちもそうだったと思うけど、何かのきっかけでライブハウスという場所に潜り込んだらドキドキするものが待ってた。だから、この先もやれソーシャルディスタンスだなんだっていう、ドキドキもないような状況が続くとみんな離れちゃう気がするけど。それこそ、「SATANIC PARTY」みたいな場所で、JasonAndrewがヤバいライブをして、そこからB.B.STREETだったりACBに客を連れていくことはできると思っていて。「SATANIC CARNIVAL」からB.B.STREETまで連れていくのは難しかったとしても、「SATANIC PARTY」からならできる。そういうことを続けて、繋げていくしかないんだと思うし、JasonAndrew……というかリョウセイならそれができると思う。はたから見ていて、面白いことをしているなって思う人だから。だって、JasonAndrewがいて、carabinaがいて、OWlがいて……って、出してる音は違うけど、そういうことぜんぜん関係なく「友達やん」っていうだけで、イベントを組めるわけじゃん。そういうバランスを取れる人あんまりいないから、むしろ「リョウセイならできる」じゃなくて、リョウセイはやらなきゃいけないよね(笑)。

ホンダ:はい、頑張ります!

──では最後にJasonAndrewとして「SATANIC PARTY」への意気込みをお願いします。

ホンダ:対バンはしたことなくても、ほぼしゃべったことはあるバンドばっかり。年齢も近いので、どのバンドにも負けたくないですね。

──RYOSUKEさんはJasonAndrewにどんなライブを期待しますか?

RYOSUKE:楽しんでほしいな。その「楽しむ」の内容はそれぞれだと思うけど、「SATANIC PARTY」という環境の中で、楽しんでほしいし、楽しませてほしい。今回「SATANIC PARTY」に出ているバンドはみんなそれができる器のあるバンドばっかりだと思うので。

──この先のJasonAndrewに期待することはありますか?

RYOSUKE:「SATANIC PARTY」の対談で言うのもナンだけど、最近って“イベントする人がいてそれに出る”という形が多くて、動員がある無い関係無しにライブハウスでバンド主催のイベントが減った気がします。それこそ昔だったらHi-STANDARD主催の「AIR JAM」があって。求心力のあるバンドだったからそもそもお客さんがきたし、彼らが集めたバンドにもどんどんお客さんがついた。俺らはそこに憧れて、「誰かに呼ばれるんじゃなくて、自分たちでイベントをやらなきゃ」って思ってきたんだけど、最近はそういうものが減っているから、JasonAndrewが率先してやってほしいな。呼ばれて出るイベントだったら、ノルマもないだろうし、「チケットが売れてない」みたいな心配もない。だけど自分たちでやると、どうにか金を集めないといけないからチケットを売ろうと必死になる。その結果、バンド主催のイベントって自然とフロアにお客さんがたくさんいたんだよね。そういう状況を若いバンドにも自分たちで作っていってほしいなと。

ホンダ:精進します!



SATANIC PARTY 2022

日程:2022年10月30日(日)
会場:東京都 Spotify O-EAST / duo MUSIC EXCHANGE
出演者:
Earthists. / ENTH / FUNNY THINK / IRIE BOYS / JasonAndrew / KUZIRA / NEST / Paledusk / PROMPTS / Sable Hills / See You Smile / Some Life / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Track's / 花冷え。 / AFJB
https://satanicparty.com/


JasonAndrew official site