OLEDICKFOGGY "残夜の汀線 Tour 2023" LIVE REPORT!!
Report by 山口智男
Photo by Chabo
2023.3.21 @新宿LOFT
"残夜の汀線 Tour 2023"
ポルカにもスカにも聞こえる、つんのめるようなリズムは、観客の気持ちを焚きつけるにはぴったりだが、リリースしたばかりの最新アルバム『残夜の汀線-ZANYA NO TEISEN-』収録の「満月とポイズン」をいきなり披露するというオープニングにちょっと意表を突かれたのは筆者だけだろうか。しかし、鹿児島大資(E.Ba, Cho)のベース・リフに三隅朋子(Accordion, Key, Vo, Cho)がアコーディオンの音色を重ねる同曲のイントロを思えば、OLEDICKFOGGYに新たに加わった2人にスポットを当て、最新ラインナップを印象づけようと考えたのだとしたら、これほどふさわしい1曲目はなかったはずだ。
ともあれ、そんな「満月とポイズン」から、ステージの6人は一気に6曲をたたみかけ、スタンディングのフロアを揺らしていった。波打つようなフロアの揺れは、1曲ごとに大きくなり、ダイブする観客の数もどんどん増えていく。
「ラスティックが止まらない」ではスージー(Gt, Cho)、鹿児島、四條未来(5 String Banjo)、伊藤雄和(Vo, Mandolin)、三隅とリレーしたソロ回しでフロアを沸かせ、そこから間髪入れずにバラードの「さよならが言えなくて」に繋げると、伊藤がマイク片手に熱唱を披露。観客を釘付けにしたところで、「ありがとう。こんなにいっぱい来てくれて。途中で感動しすぎて、声が出なくなってすまない」と挨拶代わりに嘯いた伊藤に「歌詞を忘れただけだろ」と大川順堂(Dr, Cho)がすかさず突っ込むと、客席から「ちゃんとやれ!」と次々に野次が飛ぶ。
すると、「やっといつものライブが戻ってきた」と伊藤がニヤリ。
「ホントにファンなのかな」「(新宿LOFTがある)歌舞伎町、柄が悪い」と顔を見合わせながら言ったスージーと鹿児島をはじめ、メンバー達も観客の荒っぽい歓迎を楽しんでいる。しかし、その歓迎は序盤戦から6人がフロアを揺らす熱演を繰り広げたからこそだろう。
最新アルバムと、それについて語るメンバー達の言葉から感じたバンドの絶好調をライブでも確かめたいと思い、居ても立ってもいられずに「残夜の汀線TOUR 2023」の初日である新宿LOFTワンマン公演に足を運んだところ、6人は期待通り、いや、期待していた以上に絶好調を見せつけてくれた。
「鈍ってると思われたらいけないと思うのでしっかりと仕上げて臨みたいですね。」と伊藤は語っていたが、「Gerato」からの中盤はレゲエの「残夜の汀線」、シャッフルの「暗転」とリズムに変化を付けながら、メンバー全員が一丸となった演奏でバンドの絶好調をさらにダイナミックに見せつけていく。メランコリックな歌謡メロディを歌いながら、伊藤が感情を振り切るシャウトを響き渡らせ、観客を圧倒した「blow itself away」はこの夜のハイライトの1つだったと言ってもいい。
この夜、OLEDICKFOGGYがアンコールを含め、演奏したのは新旧のレパートリーに最新アルバムからの4曲を散りばめた全24曲。前述した「blow itself away」に加え、淡々と熱を込めた演奏に改めてバンドの地肩を感じた「肯定の化学」や、伊藤と歌を掛け合いながら、三隅の歌声が瞬間的に伊藤を圧倒した「月影」も印象に残っている。『残夜の汀線-ZANYA NO TEISEN-』から披露した「エンドロール」も忘れがたい。決して派手な曲ではないものの、何度聴いても胸に染みるマンドリンのリフを、ライブで聴けたことがうれしかった。
跳ねるリズムに合わせ、踊っていた観客が、声を上げるメンバーに応えるようにシンガロングした「ヴィーナス」からの後半戦は、代表曲のオンパレードだ。どこからか「やばい!」という声が聞こえてきたが、その盛り上がりはセットリストから推して知るべし。観客のシンガロングは、もう止まらない。
「今日からツアーが始まります。このメンバーで7月15日の渋谷WWW Xまでがんばってやります。俺達OLEDICKFOGGYは驀進します!」
フロアを沸かせた伊藤の言葉に続けて、三隅がアイリッシュ調のリフをアコーディオンで奏でると、フロアから一斉に歓声と拳が上がる。クライマックスを飾ったのは、OLEDICKFOGGYのアンセム「月になんて」。
《僕は間違ってないはずさ》というパンチラインを歌う一際大きなシンガロングが響き渡る。最後はメンバー達と観客がともにラララと声を上げながら締めくくると、「神秘」から大川のドラムの連打で狂騒のロックンロール「地下で」、そこからさらにメランコリックなメロディが胸に染みる「歯車にまどわされて」とたたみかけるように繋げ、怒涛の演奏と渾身のシャウトでフロアをしっちゃかめっちゃかに揺らして、本編は終了。そして、観客もバンドもお互いにひと息つくようにアンコールを「ベターエンド」で始めたのも束の間、『残夜の汀線-ZANYA NO TEISEN-』の1曲目を飾るアンセミックなロックンロール「消えて行く前に」をメンバー全員で声を上げながら披露する。あっという間に白熱していったバンドの演奏が脳裏に焼き付けたのは、最新アルバムのツアーも含め、OLEDICKFOGGYの新しい時代が始まる手応えだった。
1時間45分にわたる熱演を締めくくったのは、ラスティックでアンセミックなロックンロール「いなくなったのは俺の方だったんだ」。エネルギッシュな演奏に加え、ノスタルジックでエモーショナルなメロディを歌う伊藤の渾身のシャウトに応える観客のダイブが止まらない。荒れ狂う海のようなフロアを眺めながら、バンジョーを奏でる四條が楽しそうに笑っている。そう言えば、鹿児島はインタビューで「未来さんが楽しそうにやっていると、その日はいいライブができたんだなって個人的には思ってます」と言っていたが、四條のみならず、メンバー全員が最高の形でツアーのスタートを切ることができたと感じていたんじゃないか。
ここからライブを重ね、バンドの演奏はさらに磨きあげられ、新曲の数も増えていくに違いない。7月15日の渋谷WWW Xまで、全国各地を回りながらツアーは続くので、ぜひ足を運んでOLEDICKFOGGYの絶好調を見届けていただきたい。かくいう筆者も渋谷WWW Xに足を運ぶつもりだ。その時には、この日、聴けなかった新曲が聴けることに期待している。