Stain hung over “Yellow” INTERVIEW!!
昨年のSATANIC PARTYでのステージも印象的なStain hung overが、デジタルシングル『Yellow』を7月にリリースした。リリース時、トビ(Ba, Vo)がSNSで「新譜出すからインタビュー受けたい。てか飲み行きたい。俺が新曲と今後のStain hung overについてベラベラ喋る会」と投稿していた(https://x.com/jumping_island/status/1805435943458877656)。ということで、新譜について、バンドの現在についてベラベラ話してもらってみた。
Interview by Chie Kobayashi
Photo by Akira”TERU”Sugihara
初のサタパで現場に居続けた成果を実感
──Stain hung overは昨年の「SATANIC PARTY」に出演しましたが、初のサタパはいかがでしたか?
トビ(Ba, Vo) すっげぇ楽しかったです! もうそれに尽きる。
──オープニングアクトでしたが、Stain hung overの時間にもたくさんの人が集まっていましたよね。
トビ はい。初めて見てくれた人も多かったと思いますが、飛んでくるのは知っている顔が多くて。上京して1年ちょっとでしたけど、1年間自分たちがコンスタントに現場に居続けるということを意識していたので、それが実ったのかなと思いました。
しゅり(Gt) 個人的に前年の「SATANIC PARTY」に遊びに行っていて。上京してライブを再開して2週間くらいだったんですが、FUNNY THINKやJasonAndrewという、同世代のバンドが出ているのを見てうらやましいなと思っていたので、1年後に出演できたのはめっちゃうれしかったです。生意気なんですけど……前年見に行ったときに、もちろんまだまだですけど、なんか「手が届くな」という気持ちがあったんで、届いてうれしかったです。
──サタパをきっかけにStain hung overを知ったという声も聞きますか?
しゅり はい。サタパ以降「サタパで見てライブに来ました」といってライブに来てくれる人がめっちゃ増えました。
トビ 取り置きリストに書く名前も、知らない名前が増えていったりして。うれしいです。
メロディックパンクを聞かない人を現場に連れて来たい
──先月デジタルシングル『Yellow』がリリースされました。シングルとしての全体像や構想などはあったのでしょうか?
トビ はい、“メロディックパンクとエモの融合”をテーマに作りました。メロディックハードコアとかメロディックパンクって全部同じに聞こえるってよく言われますけど、その外からの声を内側に持っていきたいと思って。メロディックになじみのない人にも聞いてもらえて、普段メロディックパンクを聞かない人を、僕たちの現場に連れてこられるような作品にしたいなと思いました。
──そのための曲作りは普段とは違う?
トビ そうですね。歌詞やメロディに、好きなバンドの要素を入れたりしてルーツを感じられるようにしました。
──ではここからは収録曲について1曲ずつ話を聞いていきたいと思います。まずは表題曲「Yellow」。この曲はどのような想いで書いた曲ですか?
トビ この曲では、理想のフロアについて考えました。僕はやっぱり、全員でのシンガロングや、感情が高ぶって起きるモッシュ・ダイブが広がるフロアが好きで。それを作るためにはどうしたらいいんだろうということを考えて曲にしました。サビの「We are alright Even if We are drowned in blue」とかは、僕らが歌わなくてもフロアから大きな声でこの歌詞とメロディが聞こえたらいいなって。
──この曲で理想のフロアを作る、と。
トビ はい。映画の『BECK』で、コユキが「MOON BEAMS」をメンバーに持って行ったときに「フェスの大きいステージで俺らが演奏しているところが想像できた」という描写があるんですけど、それをちょっと意識しました。この曲を聞いた瞬間にStain hung overのフロアや、みんながシンガロングだったりモッシュダイブしているところがイメージできるようなものにしたつもりです。
しゅり この曲、制作の段階では、2つのパーツに分かれていたんですよ。
トビ メロディック要素とエモ要素がね。
しゅり そうそう。だから1曲になって完成したときは「カッケーの出来たな」と思いました。今までの俺らになかったものができちゃったじゃん!って。うれしかったですね。
──この曲に「Yellow」というタイトルをつけたのはどういった想いからだったのでしょうか?
トビ 今回のシングルは、“上京してから考えていること”と、“地元・酒田での思い出”という2つを表現したいと思っていたんですけど……。上京前、酒田にいるときに「本当に上京してうまくいくんだろうか」という不安とか何にもなれない怖さでいっぱいいっぱいになってしまって。そんなときに酒田の海沿いをドライブしていたら、真っ赤な夕日が落ちて、オレンジ色がだんだん夜のネイビーに溶け込んでいく途中の、すごく綺麗な黄色になる瞬間を見て。「死ぬ前に思い出すのはこの景色なんだろうな」って思ったんです。そしたら「死んでもいいからやりたいことやろう」と前向きな気持ちになれた。そのときの気持ちもこの曲で表現できたらいいなと思ったし、この曲で作り上げたフロアが、死ぬ前に思い出す景色の一つになればいいなと思って「Yellow」というタイトルをつけました。
別れを前向きに捉えた「Rest of my life」、酒田の思い出の道「97」
──続いて2曲目「Rest of my life」。メロディも歌詞もひときわなエモーショナルな1曲です。
トビ これはとにかく好きなものを詰め込みました。サウンドはLagwagonを意識しています。歌詞でいうと……Yellowcard「Awakening」の「'Cause with the morning comes the rest of my life」から取りました。僕は英語詞を「何て歌っているんだろう」って和訳するのが好きなんですけど、そのときに「rest of my life」という歌詞から「“残りの人生”か」と思って、自分の残りの人生を考えて。
──何か、残りの人生について考えるきっかけが?
トビ 歌詞でも“私はあなたなしで残りの人生を生きていく”ということを歌っているんですけど、21歳のときに、親戚が亡くなってしまったり、当時付き合っている人と別れたり、一緒に働いていた人が辞めたりして、別れが続いたタイミングがあったんですね。それだけじゃないですけど、21年間のどこかで一緒に過ごしてきた人たちに向けて歌った曲なのかなと思います。僕、人が離れていくことがすごく嫌なんです、さみしがり屋なので。だから別れを前向きに捉える曲として、21年間生きてきた僕なりの、そういうときにどうすればいいかという解釈を歌詞にしました。
──人が離れていくことがすごく嫌だとのことですが、その気持ちを曲にすることで、何か考え方に変化などはありますか?
トビ すごく変わりましたね。結局執着していても自分が辛くなるだけなんだなと学びました。あとは、自分のことを大事にしてくれる人を大事にすればいいんだという考え方になって。それこそ別れが続いたタイミングで、いっぱいいっぱいになって、信頼できる先輩に泣きながら電話していたら、埼玉に住んでいるその先輩が「今から行くわ」って、夜中の2時半にレンタカーを借りて1時間くらい車を飛ばして会いに来てくれたということがあって。こういう人を大事にしたいなって思ったことも、裏テーマとして入れ込みました。
しゅり 俺、この曲でひとつシンプルに天才だなと思ったフレーズがあって。「A little money , our music,alcohol and crazy funny friends ,That's all」です。そのフレーズは、メロディも言葉も最高だなと思いました。Stain hung over史上最高の語感だと思いました。
トビ 実際、俺らもお金もないしお酒大好きだし。
しゅり 自己投影もえぐいよな。演奏しているときも、ここ演奏するとき超テンション高くなっていると思います(笑)。
──3曲目は「97」。読み方としては……?
トビ 「ninety-seven」です。僕らの地元の鶴岡市から、ライブハウス・酒田hopeがある酒田市に行くときに車で通るのが旧国道7号線という道で、地元の人はその道のことを「キューナナ」と呼ぶんです。その道を通って遊んだことや、キューナナにまつわる思い出や気持ちを投影したのがこの曲です。
──でも曲名の読み方は「ninety-seven」なんですね。
トビ その道のことを歌っていますけど、“余韻”もテーマの一つにしていて。100%じゃない、97%は満足していて、残りの3%は「もう少し一緒にいたいな」という気持ちがあるみたいなことも表現できたらと思って。
──「キューナナ」という語感から発想を広げていったんですね。
トビ はい。この曲は間奏の前と間奏の後で景色を変えていて。当時、バイト終わりとか夜ごはんを食べ終わってからとか、とにかく夜中によくキューナナを通って遊びに行っていたんです。だからその特別感や、「早くみんなに会いたい」という気持ちを前面に出しています。後半は帰り道。「まだ帰りたくない」とか「物足りなさ」を表現しました。昔作った曲に「Like a star」という曲があるんですが、その曲も同じテーマで作った曲なので、ぜひその曲と比べて聞いてほしくて。そうやって聞くともっと面白くなるんじゃないかな。
──「Like a star」は山形に住んでいるときに作った曲ですよね?
トビ はい。だから同じテーマで歌っていますけど、「Like a star」のときは、明日も明後日もそいつらと遊ぶ約束がある中なのに対して、「97」は環境が変わった今、地元にいた頃のあの時の思い出について歌ってます。
──3曲について、できた背景などを聞いてきましたが、サウンド面や演奏の面で、注目してほしいところや好きなフレーズを教えてください。
しゅり 個人的には「Yellow」のイントロ。途中からテンポを上げるんですけど、一気にメロディックパンクになる瞬間が気持ちいいです。テンションが上がります。
トビ エモとメロディックを融合させるというテーマの中で、イントロにすごく悩んでところ、しゅりがいくつかリフを提案してくれました。そのなかでもピカイチで良いものを採用してます。僕もかなり気に入ってます。
──聴いていてもテンションが上がる瞬間ですよね。
トビ はい。僕が気に入っているのは、「Yellow」のギターソロ。しゅりが最初に持ってきたギターソロのフレーズが、僕的にちょっと違って「悪くはないけど、最高ではないよね」と相談して。これもまたLagwagonを意識して作りました。
しゅり レコーディング直前のスタジオでようやく完成したフレーズで。そもそも自分の手癖とはかけ離れていたし、全然体に馴染んでいない状態でレコーディングしたので、レコーディングでノイローゼになるかと思いました。だから俺はトラウマです(笑)。
トビ ほんとごめんよ(笑)。今まではメンバーそれぞれが技量が伴ってないのでバンドとしての表現の幅が狭かったんですけど、バンド始めた頃と比べて少しずつ上手くはなってると思うので、今回は無理言ってお願いしました…! 僕としては、完璧なものができたと思っています!!
KUZIRAのライナーノーツに影響を受けた
──お話を伺っていて、トビさんは曲を作るのがお好きなんだなと思いました。
トビ 好きです! めちゃめちゃ好きっすね。
──今回も「新譜出すからインタビュー受けたい」とSNSで発信されていましたし、お話を伺っていても、曲にいろんな想いはもちろん、遊び心だったり裏テーマだったり、いろんなものが隠されていて。
トビ はい。一番影響を受けたのがKUZIRAなんですけど、KUZIRAって歌詞カードに、歌詞とは別に竜さん(末武竜之介[Vo, Gt])のライナーノーツがあって。こういうことを僕らもやりたいなと思ったのが、今回の曲作りにも反映されていると思います。二度楽しめるのがいいなって。地元では曲よりもライブで評価される環境だったように感じていたんです。「ライブがカッコいいことが正義」みたいな。もちろんそれも一つの価値観ですが、上京して、ライブだけじゃなくて、制作もストイックにしているバンドにたくさん出会って。それがまた刺激になっています。
──『Yellow』リリース後のバンドの展望や目標はどのように考えていますか?
トビ 最初にも話したように、『Yellow』をきっかけに、メロディックパンクに興味がなかった人にも広がっていけばいいなと思っています。まずは『Yellow』のツアーファイナルが酒田であるので、僕らが上京して2年間の間に一緒に遊んできた友達やお客さんが酒田に足を運んでくれたらいいなと思っています。酒田hopeは、しゅりがもともと働いていたライブハウスでもあるので、そういう意味で還元をしたいという気持ちもあって。
しゅり 酒田Hopeはオーナーがハードコアパンクをやっているので、上京するまでは酒田hopeでライブをするのはちょっと緊張したんですけど、物理的に(笑)。上京後は実家のような安心感を抱くようになって。他のライブハウスとは比べ物にならないくらいのびのびできるライブハウスです。ツアーファイナルでは、そのオーナーが所属するFRIDAYZも出てくれます。ぜひ遊びに来てください!
Stain hung over Digital single『Yellow』
01. Yellow
02. Rest of my life
03. 97
Digital single『Yellow』Release Tour FINAL
2024年8月11日(日)山形県 酒田hope
Stain hung over / carabina / IMASHI / SEETHING OF LIFE / FRIDAYZ
Stain hung over official X
https://x.com/stain_hung_over