TOYSNAIL “HELLO, MY UNDERGROUND” INTERVIEW!!
千葉出身のスリーピースバンド・TOYSNAILが、今年6月にHOTSQUALLの自主レーベル・ONION ROCK RECORDSへの所属を発表した。ONION ROCK RECORDSに、HOTSQUALL以外のバンドが所属するということも含めて、そのニュースは驚きと共に話題を集めた。そしてTOYSNAILは同レーベルより1stミニアルバム「HELLO, MY UNDERGROUND」をリリースする。レーベル所属の経緯も含め、彼らに話を聞いた。
Text by Chie Kobayashi
Photo by Taio Konishi
“一番燃えているやつ”で組んだTOYSNAIL
──TOYSNAILは2021年結成ということですが、まずは結成の経緯を教えてください。
キリ(Vo, Gt) もともとそれぞれ別のバンドで活動をしていたんですが、コロナ禍でそれぞれのバンドがうまくいかなくなっちゃって。一番燃えてるやつがくっついたみたいな感じです。
──ちょうどそれぞれのパートのメンバーが集まったのがすごいですね。
しこやま(Ba, Cho) 実はパートはかぶっていたんですけどね。僕はドラムだったんです。でも譲りました。
たなえり(Dr, Cho) ベースも弾けそうだったから「ベースやる?」って言ったら「やります!」って。
──すごいですね。でもパートを変えてでも一緒にバンドをやりたかったということですよね。
しこやま そうです。もともとキリとたなえりは同じバンドで、俺だけ違うバンドだったんです。で、俺とキリは職場が一緒なので、お互いのバンドの話をしているうちに「俺、この人と一緒にバンドをやりたい」と思うようになって。ギターで誘われたらさすがに無理だったと思うんですけど、ベースなら……ってなんか思っちゃって。
キリ 4弦だしね。
しこやま そうなんですよ。弦少ないし、数字の4好きだし。
キリ そうなんだ!?(笑) 初めて知った(笑)。
──キリさんはしこやまさんをバンドに誘っていたんですか?
キリ はい。バンドってやっぱり人が一番大事だと思うんで、こいつと一緒にやったら面白そうだなと思っていました。
しこやま 俺、ベース担当っていうより“バカ”担当だったもんね、最初。
キリ その「Ba」なんだ(笑)。
当時聴いていた先輩と、一緒に音楽をできているなんて
──皆さんの音楽的なルーツも教えてください。
たなえり 私がバンドというものをちゃんと知ったのはUVERworld。そこからバンド好きな友達と知り合ってELLEGARDENとかを聴くようになりました。高校には軽音楽部がなかったのでライブハウスに行くようになってコピバンを始めて。その時期にキリとも知り合って。メロディックパンクをいろいろ教えてくれたのはキリでした。
──ドラムを始めたきっかけは?
たなえり 最初はやっぱり花形だしギターに憧れたんですよ。でもFコードで挫折して。次にベースにも挑戦したんですが、そのときはベースの魅力がわからなくて。で、ドラムを触ってみたら、叩けばすぐに音が出るので「ドラムって簡単かもしれない」と思ってドラムを始めました。周りにいっぱい並んでいるのもキラキラしてカッコいいしって(笑)。
──キリさんからメロディックパンクを教えてもらったということですが、そのなかで特に好きになったバンドや影響を受けたバンドはいますか?
たなえり それこそ最初に聴いたのはHOTSQUALLでした。その時期、キリがYouTubeでいろんなバンドのMVを教えてくれていて。HOTSQUALLとかFOUR GET ME A NOTSと、今思えば千葉のバンドをきっかけにメロディックパンクを聴き始ました。
──キリさんは千葉のバンドだからという理由でHOTSQUALLやFOUR GET ME A NOTSを教えたわけではなく?
キリ 本当に偶然です。千葉のバンドだということは知らなくて、ただカッコいいバンドの一つとして聴いていただけでした。
たなえり すごいことだよね。当時聴いていた先輩と、今関わって一緒に音楽をできているなんて。
しこやま 人生ってすげえな……!
──そんなキリさんの音楽的ルーツは何ですか?
キリ 俺はビジュアル系とかメタルが好きで、ずっとそういう音楽を聴いていたんですが、高校に入って組んだバンドがメロディックパンクのバンドだったので、そこからメロディックパンクを聴くようになりました。当時、ドラムだったんですが、そのバンドのボーカルがすごくバンドに詳しかったのでそいつにいろいろ教わりました。
──キリさんもドラムだったんですね。
キリ そうなんですよ(笑)。本当はピンボーカルがやりたかったんですけど、当時の軽音楽部にうまいドラマーがいなくて。「こんな下手くそなやつのドラムでは歌えない」と思って、自分がドラムをやっていました。
──バンドメンバー全員がドラム経験者って珍しいですよね。
たなえり 珍しいと思います。
しこやま ドラマー不足と言われる時代に!
──しこやまさんのルーツを教えてください。
しこやま 両親が音楽好きで。幼稚園の送迎の車の中で、マキシマム ザ ホルモン、THE BLUE HEARTS、NEWEST MODEL、メスカリン・ドライヴ、X JAPANとかがずっと流れていたので、幼少期からロックバンドをずっと聴いていました。
──英才教育ですね。
しこやま 英才教育だってめっちゃ言われます(笑)。地元に「氣志團万博」というフェスがあったので、家族旅行みたいな感じで毎年行っていたんですけど、そこで2013年に見たMAN WITH A MISSIONがすっげぇ楽しくて、そこからSiMとかcoldrainとかを聴くようになって。高校生くらいから、フェスで見ていいなと思ったバンドを聴くようになっていきました。
──楽器を始めたのはいつ頃ですか?
しこやま ドラムは2〜3歳くらいのときからやらされていたみたいです。親が、自分たちがバンドをやる上でドラマーを見つけるのがめんどくさいから息子にやらせちゃえっていう理由で。
──家族でバンドを組もうとしていたんですか?
しこやま 家族でコピバンはずっとやっていました。HIDEとかBiSHとか。
キリ (しこやまの)家にスタジオがあるんですよ。だから練習も家でできるっていう。
たなえり TOYSNAILでもお世話になっています。
──音楽に囲まれるようにして育ったしこやまさんですが、その中で特に好きなアーティストや大きな影響を受けたなと思うアーティストはいますか?
しこやま やっぱりメロディックパンクですね。04 Limited Sazabys、ENTH、BACK LIFT、あとはそれこそHOTSQUALL。僕も最初はHOTSQUALLを千葉のバンドだって知らなかったんですが、稲毛で「ONION ROCK FESTIVAL」が開催されていたときに「何で稲毛でやるんだ?」って思ったんですよ。で、調べたら千葉出身だと書いてあって「なるほどな」と。
レーベル所属で背負うものが大きく
──先ほどから「HOTSQUALLに影響を受けた」「HOTSQUALLを聴いていた」という言葉が幾度も飛び出していますが、TOYSNAILは2024年6月に、HOTSQUALL主宰のONION ROCK RECORDS所属を発表しました。ONION ROCK RECORDSへの所属はTOYSNAILからのオファーだったんですよね?
キリ はい。チフネさん(HOTSQUALL)と飲みに行ったとき「レーベルとして所属バンドを持ってみたい」みたいなことを言っていて。それを俺の前で言ってくるってそういうことなのか?と思って。
たなえり 駆け引きしたんだ!?(笑)
キリ まじで駆け引きだった(笑)。「もしかしてやらせてもらえるんですか?」って図々しくも聞いてみたら「本気でやる気があるんだったら」と言ってくれて。そのあと速攻メンバーに話して、所属させてもらうことになりました。普段からすごく親身になって話を聞いてくれるし、すごく近い距離でいろいろ教えてくれるので、大手レーベルとは違う答えに行き着けそうだなと思って決めました。
──それまでもいろいろ話を聞いてもらっていたんですね。
キリ はい。音作りについてはもちろんなんですけど、もっと細かいところ……例えばどんな服を着たらいいかとか、お客さんとの接し方とか、そういうことまで。まるで出会ったときからレーベルに入っていたんじゃないかと思うくらいいろいろアドバイスをしてくれていたので、その延長みたいな感覚ですね。
──実際にレーベルに所属してから、制作や活動に何か変化はありますか?
キリ 「ちゃんとやらなきゃな」と思うようになりましたね。背負うものが大きくなったというか。たらたらマイペースにやっている場合じゃねえみたいな気持ちはあります。
──そしてONION ROCK RECORDS所属後初のミニアルバム「HELLO, MY UNDERGROUND」が完成しました。バンドとしては2ndミニアルバムとなりますが、アルバムのテーマやコンセプトは何かありましたか?
キリ とにかく今のTOYSNAILのベストをパッケージしようと思っていました。
しこやま チフネさんの助言なども受けながら、デモに入っていた既存曲3曲と新曲と。今までのTOYSNAIL感は残しつつ、新しいところもチラつかせました(笑)。
キリ いい感じに今後が楽しみになるような内容にできたかなと思っています。
──選曲やレコーディングにもHOTSQUALLメンバーが加わっているんですね。
たなえり チフネさんがドラム録りからレコーディング全部来てくれて。うちらが「ここどうしようか」ってなったときに、天の声みたいに助けてくれるという存在でした。
──楽曲制作に関してもアドバイスはありましたか?
キリ 今回はあんまりなかったです。自由にやらせてくれました。
──「今回は」ということは今後は……?
キリ 「今後は口を出してみたいな」って言ってました(笑)。
──それはそれでまた違うTOYSNAILが見られそうですね。
キリ はい、それも楽しみです。
にんにくはおいしいのにあんまり食べられないのが悔しくて
──ここからは「HELLO, MY UNDERGROUND」収録曲について話を伺っていきたいと思います。まずMVが早々に公開された「Garlic」から。ひたすらニンニクのおいしさを歌った曲ですが、この曲ができた経緯は?
キリ 昔、しこが「歌詞を書いたんだけど」って送ってくれたのがにんにくの曲で。曲はできたけど、歌詞に悩んでいたときに、「そういえばあいつ、にんにくの曲の歌詞を送ってきたことあったよな」って思い出して。
しこやま さっき職場が一緒って言いましたけど、僕らの職場はラーメン屋で。ニンニクって、すごくおいしいのに、口が臭くなるから頻度としてはあんまり食べないじゃないですか。それがすごく悔しくて、詞が浮かんだんですよ。
キリ それ自体は結構前のことなんですけど、2年くらい経て「そういえば」って思い出して、しこの詞を参考にしつつ1から書き直しました。
──そのまま使ったわけではないんですね。
キリ 結構ドラマチックだったんですよ、にんにくとはいえ(笑)。
しこやま イメージとして、こんなハードコアな感じじゃなくて。
──にんにくの気持ちを切なく歌うみたいな?
しこやま そうです! 8ビートの曲をイメージしていたんです。泣かせる感じで。
キリ 「これから彼女に会うのに」みたいな。それをとにかくバカっぽい歌詞にしました(笑)。
──内容は少し変わりましたが、にんにくの曲が完成した今の心境はいかがですか?
しこやま 8ビートじゃなくてよかったなって思います(笑)。
一同 あはは(笑)。
しこやま 叫んでいるパートは僕が歌っているんですが、本心で歌っています。一番気持ちが入る曲です(笑)。
──それこそ、これまでのTOYSNAILにはなかったハードコア調の楽曲ですが、サウンド面についてはどのような思いがありますか?
キリ 俺は「こういうの出来ちゃうんだ」と思いましたね。RAZORS EDGEとかも好きなんですけど、憧れであって、俺らがやるとは思っていなかったというか。「俺らじゃないよね」って一歩引いているところがあったんですけど、「やっちゃおう」と思ったら意外と作れちゃって。歌詞もふざけられたし、満足です。
たなえり 演奏する上では1日2回までしか叩けないです、速すぎて(笑)。こんなに速いビートを叩いたことがなかったので、体がびっくりしちゃってます。楽しいですけど、先に体の限界が来るっていう新しい挑戦の1曲になりました(笑)。
TOYSNAILの楽曲を通していろんな夢を見せたい
──その他の楽曲で、特にチャレンジだったなと思うところや、気に入っている曲などをお一人ずつ教えてください。
キリ 俺はシングルにも入っている「This town gives me happiness」。単純にメロディだけで勝負できる曲になったなと思って。このジャンルって、「速くてナンボ」みたいに思っているヤツも多いと思うんですけど、俺はメロディだろと思っていて。そういうところで勝負ができたかなと思います。
しこやま 「Choose you」「Shooting star」「Dreamer」の3曲がデモの再録バージョンなんですが、特に「Dreamer」「Shooting star」は1stデモの曲なので、改めて聴いてみると成長が感じられるなと思いました。勢いだけじゃなくてちょっと大人になった感じがすると思うので、ぜひデモを持っている人には聴き比べてみてほしいなと思います。
たなえり 配信シングルにも収録されている「Blue」。この曲はDビートと呼ばれるビートなんですが、今まではあまりやっていなかったビートで。自分の中にあんまりこのビートのパターンがなかったので、新しくパターンを覚えるのに苦労して、レコーディングギリギリまで「できない」「今日もできない」みたいな感じが続いた1曲でした。
──歌詞でいうと2曲目「Lantern」はフィクションの物語のようなテイストで他の楽曲とは視点が異なります。そこはどのような意識で書いているのでしょうか?
キリ 自分ではあんまり意識していなかったですけど、そう言われたら確かに「Lantern」は面白く書けた曲だなと思いますね。俺、歌詞は小説を書くような気持ちで書いているというか。書いているのは俺だけど、1つ1つ全部違っていていいと思っているんです。例えばこっちでは「あいつを殴りたい」って歌っていたとして、別の曲では「人は殴っちゃダメだ」って歌っていてもいいのかなと思っていて。なんかいろんな夢を見せたいんですよね。この感覚はもしかしたらビジュアル系を通っていたことが生きているのかもしれないんですけど。
──なるほど。つまりTOYSNAILの音楽で伝えたいメッセージがあるわけじゃないということ?
キリ いや。“自分がやりたいことをやれよ”ということは伝えたいと思っています。
──やりたいことをやっている姿を見せることで、それを伝えていると。だからいろんな曲が書けるんですね。
キリ そうです。というか、そうじゃないとやっていても面白くなくなっちゃうと思う。
──本作に「HELLO, MY UNDERGROUND」と冠した想いを聞かせてください。
キリ カッコよかったからです。
しこやま 今言ってたことはこういうことです。「俺がカッコいいと思ったものをみんな見ろよ」っていう。
キリ そうそう。まぁレーベルに所属してから最初のCDだから「HELLO」は入れたいなと思ったのと、俺たちが活動しているライブハウスという意味で「UNDERGROUND」って入れたら良さそうだなと思って。それをチフネさんに相談して「MY」を付けたらオシャレになるじゃん!となりました(笑)。
──最後に、バンドとしての今後の目標や展望を教えてください。
キリ 千葉のスターになりたいなと思っています。「千葉と言ったらTOYSNAILいるよね」って思ってもらえるような、認知してもらえるような活動がしたいです。
たなえり TOYSNAILになってから千葉というものを好きになり始めた節があるんですが、3人とも千葉出身だし、そう思わせてもらえる人の繋がりがあったからなのかなと思います。それは大事にしていきたいですね。
──ちなみに千葉のライブシーン、バンドシーンは今どんな感じですか?
しこやま ジャンルはバラバラだけど、みんなすごく仲が良くて。お互いが呼び合って千葉というシーンを作り上げていくという意味では、ジャンルがバラバラなほうがカッコいいと思っているので、それができるシーンだなと思っています。今、千葉がアツいです!
キリ そんな千葉シーンやTOYSNAILを知るために、まずはぜひツアーに来てください!
TOYSNAIL「HELLO, MY UNDERGROUND」
1.Dreamer
2.Lantern
3.Blue
4.This town gives me happiness
5.Garlic
6.Choose you
7.Shooting star
※LIVE会場&通販限定販売
TOYSNAIL「HELLO, MY UNDERGROUND TOUR 2024」
2024年9月8日(日)千葉LOOK
2024年9月13日(金)福岡LIVE HOUSE OP's
2024年9月14日(土)長崎STUDIO DO!
2024年9月28日(土)出雲APOLLO
2024年9月29日(日)広島SPYDER
2024年10月5日(土)金沢vanvanV4
2024年10月6日(日)長岡音楽色堂
2024年10月12日(土)名古屋Party'Z
2024年10月14日(月・祝)滋賀B-FLAT
2024年10月19日(土)岡山CRAZYMAMA 2nd Room
2024年10月20日(日)高松RIZIN'
2024年10月29日(火)水戸LIGHT HOUSE
2024年11月2日(土)札幌KLUB COUNTER ACTION
2024年11月4日(月・祝)横須賀かぼちゃ屋
2024年11月10日(日)盛岡the five morioka
2024年11月17日(日)心斎橋 新神楽
TOUR FINAL
2024年11月29日(金) 高田馬場CLUB PHASE