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culture

THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION Vol.06:Satoshi Okada

Photograph by Yuta Kato Interview by YT



SATANIC ENT.はライブハウスから生まれるシーンを紹介するメディア。では、ライブハウスではバンドやアーティスト以外にどんな人が働いているんだろう? ライブハウスの店長さんやスタッフさんはどんな経緯を経て、そこで働いているんだろう? 言わば"ライブ職人さんたち"に、そんな疑問をストレートに投げつけまくるのが本企画"THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION"! 登場するのはPA、照明、バンドのマネージャーさんやレコーディングエンジニア、ライブハウスシーンを取り巻く人を徹底追求!

第6回目は西槇太一さんからのバトンを受けて、アーティストに同行し機材搬入から楽器のメンテナンスやセッティングを行う仕事ローディーに携わる岡田聡さんに出演してもらう。怒髪天やkobore、星野源など名だたるアーティストのサポートを行う彼の魅力はなんなのだろうか。

INTERVIEW


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音楽系の仕事なら刺青も大丈夫じゃね?くらいの感覚でした


ーまず、簡単な自己紹介をお願いします。

岡田:岡田聡、今年41になります。で、北海道出身です。

ーでは学生時代はどのように過ごしていたんですか?

岡田:高校一年生でやめちゃってますので。学生時代はほとんどないんです。

ーそうなんですね。今はローディーのお仕事をされていますが、当時から音楽が好きだったんですか?

岡田:中学時代から音楽は好きで、中3でベースを弾いていました。高校に入ってからは先輩に誘われて軽音部というか同好会みたいなところに入って。そこの先輩の繋がりで地元でバンドやってるやつらとかを紹介してもらい、ちょこっとだけバンド活動をしたりして過ごしていましたね。退学してからは、働きながらなんとなく音楽が好きでバンドやったりしていました。

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ーローディーという仕事にはいつ出会ったんですか?

岡田:退学して少し経ってから地元の旭川を離れて、札幌に6年くらい住んでいたんですけど、北海道のRISING SUN ROCK FESTIVALの主催などライブの企画・運営をしているWESSってところでバイトをしていたんです。そこのバイトのチーフクラスの人たちに気に入ってもらったのもあり、居心地が良くて6年間在籍していました。その間にTHE HIGH-LOWSが北海道で5本くらいツアー回ったことがあって。その時にTHE HIGH-LOWSさんに付いてたローディーさんと仲良くなったんです。それがきっかけですかね。

ーなるほど。

岡田:でも、まだその時はローディーをやろうって具体的なことは考えてないですよ。「お前、面白いから東京に出てくればいいじゃん」って言われて。オレも「はい、お金貯めて行きます!」って勢いで17年前の24歳の夏の終わりに出てきたんです。

ーそこから上京して来て、すぐに音楽の仕事を?

岡田:そうですね。それに僕、刺青入っていて。当時ってそんなに刺青の認知度が高くないので、札幌にいても普通の仕事出来ないって思ったんです。とりあえず音楽は好きだから東京でもそっち系の仕事をすれば、刺青も大丈夫じゃね?ってくらいの感覚でした。それに年齢的にも若い時の方が動きやすいと感じて「とりあえず出ちゃえ!」って、家も仕事も決めずに飛び出してきたんですよね。

ー勢いは大切ですよね。

岡田:そうですね。で、THE HIGH-LOWSのローディーさんがRadio Carolineって3ピースバンドのマネージャーと仲が良かったので、そこの人たちの家に居候をさせてもらっていて。今度はTHE HIGH-LOWSのローディーがしてる別のバンドの手伝いをしていました。そしたら仕事が入るようになってきて。それがthe pillowsだったんですけど、そっからです。ちゃんと仕事としてローディーをするようになったのは。

ーある意味、事の成り行きでローディーの道に踏み込んで行ったんですね。今はちょうど怒髪天のツアー中と仰っていましたが、怒髪天からはどのように仕事をいただくようになったのですか?

岡田:WESSでバイトをしていた時、社員さんに「とりあえず、お前は北海道出身なんだから、東京に言ったら怒髪天の増子さんに挨拶に行け」。って言われていて。東京ついた翌日にたまたまライブをやっていたので挨拶しに行きました。そこからの付き合いではあるんですけど、ローディーやりますとか言ってないんです。なんですけど、多分the pillowsの仕事をしているのを見てくれていたのかな?で、6〜7年前くらいに怒髪天が初めて日本武道館でやる時に正式に仕事として呼んでいただけたんです。

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変な話ローディーっていなくてもなんとかなると僕は思うんですよ


ーここまでのお話を聞く限り、だいぶ足で稼いでいるんですね。ちなみに、怒髪天以外ですと、どのようなアーティストのローディーをやられているのですか?

岡田:今は星野源やTHE NOVEMBERSにkoboreってバンド、それと、あんまり稼働はないんですけどCHEMISTRYの堂珍ソロだけなどを担当しています。

ービッグネームがズラリですね。そんなアーティストさんと仕事ができているのも長年の経験があるからこそだと思うのですが、ここまで続けることで良い事も悪い事もたくさんあった思います。なぜ、ずっとローディーをやってこれたんですか?

岡田:いや~とりあえず、一番の前提として音楽が好きなのとローディー以外何も出来ないんですよ。それに、純粋に楽しいんですよね。各地いろんなところに行ってライブハウスの人達と出会っておしゃべりして。すごい人たちもいますし、いろんな人たちと繋がれて。しかもステージ上からお客さんの顔を見れるのってメンバーとモニターマン、あとはローディーだけだと思うんですけど、やっぱり楽しそうにしているお客さんの顔を見ると気分も上がりますよね。

ーそこが仕事のやりがいにも繋がっているんですか?

岡田:そうですね。あとは、変な話ローディーっていなくてもなんとかなると僕は思うんですよ。ローディーの仕事って機材車転がして会場に楽器搬入して音出して、更には会場で音のニュアンスが変わったりするんですけど、それに合わせて全部いじったりとか。それってメンバーとマネージャーが頑張ればできちゃうことなんです。楽器で凄くいい音を作ったからといってお客さんに伝わっているかっていったら全部は伝わっていないんじゃないかなって。お客さんが楽しんでいるのって、この場の雰囲気とメンバーの演奏。音の良し悪しはよっぽどの事がないと伝わらないと思うんですけど、ただこっちが渾身の音作りをして身内でメンバーやPAやマネージャーに「今日よかったね~いい音してたね~。」って言ってもらえると、その日のお酒はすごく美味しいです(笑)。よし!ってなります。

ーでも、ローディーがいるといないとでは音の良さが全然違うという話もよく聞きます。

岡田:僕の個人の考えですけど、やっぱり人間って聴覚よりも視覚じゃないかなと思っていて。照明が派手だとかメンバーがキレッキレの動きしていると、そっちの方に意識がいっちゃうものだと思うので、音は最低限、鳴っていればいいんです(笑)。自分の仕事を否定するみたいですけど。

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ーいやいやいや(笑)。

岡田:あとは最悪の場合、音が鳴らない時があるんで、それに対応するために舞台袖にいるってのは大きいですね。この間も怒髪天でちょっとトラブったりはしましたけど、それをなんとかするのが仕事なので。

ーやはりライブ中は常に気を張っていることが多いんですね。

岡田:でも、たまに記憶ないですよ?(笑)。「あれ?2曲くらい進んでんな。」とか。別に寝てるわけじゃないんですけど、無意識になっちゃってるんです。

ーでは逆にこの仕事の大変な部分は?

岡田:それは腰が…(笑)。楽器って重いんで辛いのと、体が痛くなっちゃうのとツアーにいっていると1週間~2週間出ちゃうんです。そうすると子供が小さいので家に帰れない事がちょっとあれかな~ってくらいですね。でも、全体的に楽しい事の方が多いと思います。

ーそれはすごくいい事ですよね。では今までやってきた仕事の中で一番感動した事ことはなんですか?

岡田:2〜3年前に源くんがドームツアーを開催して、僕は初めてドームツアーに同行したんですけど、やりきった感が出ちゃいましたよね。彼が登場した時に東京ドーム4万人分の歓声があがった瞬間に『あーすごいな~』って。あ、すごいのは僕じゃなくて、源くんなんですけど(笑)。そういう景色を見させてもらえたってのはありがたいことですね。本番始まる前はゲロ吐きそうになるくらい緊張しましたけどね(笑)。

ーやはりお客さんの期待が大きいと緊張するんですね(笑)。

岡田:『ギター音鳴らなかったらどうしよう』って思いながら渡していたのを鮮明に覚えています(笑)。

ーローディーは凄いテクニカルなお仕事だと思うんですけど、それってご自身がベースをやられていたからできた事なんですか?

岡田:ベースをやっていたと言っても遊び程度でしたし、ステージ上の知識をいれたのはこの仕事を始めてからですね。実は今でも分からない事は多いんですよ。結構コンプレックスなんですけど、ローディー界で楽器は下手な方です。サウンドチェックもあまりしたくないくらい…(笑)。まあ、しょうがないなって。今は楽器を練習しているんですが歳とっちゃって上手くならないし。でも、ローディーはみんな知らない部分はそれぞれあると思う。ただ、そういう出来事があった日は、後で自分で調べて対応出来るように努力しています。

ー始めた当初は誰か先輩とかに付いて教えてもらったりしたんですか?

岡田:いや、THE HIGH-LOWSのローディーをやっていた人も適当なんで。最初にお話しした「お前、面白いから来ればいいじゃん」って言ったっきりなんですよ。なので、師匠という師匠はいないんですよね。だから呼んでもらった現場で分からない事を聞くっていうスタンスにしたんですよ。ホント上京したての頃は、若いし北海道から出てきて知り合いもいない状態だったので、みんな敵だと思っていました。でも、レミオロメンのローディーをやり始めた時に凄く面白い先輩がいて、「あ、これくらいラフな感じでいいんだ!」って気付けたので、分からない事はちゃんと聞くってスタンスにしていきました。

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ーほんとに現場で学んだって感じですね。

岡田:現場それぞれでやってみないとわからない事の方が多いですし、その現場で必要なことが若干違ったりはするので、随時知識をインプットしていっている感じですね。

ー応用力が大事なのかなって今のお話で感じました。

岡田:ローディーだけじゃないと思うんですけど、悪い言い方をすればその場その場で凌ぐ(笑)。凌いでなんとかやっています。

ー楽器全てのセッティングも仕事の一つですが岡田さんが得意なのはベースですか?

岡田:ギターとベースって言いながらも、半分くらいハッタリですよ。

ーそうなんですか?(笑)。

岡田:それこそ物理的にも気持ち的にもメンバーと一番距離が近いんです。だから「この人がいればなんとかなる」って思わせるポジションです!(笑)。でも実際なんとかしてきているから仕事ももらえているんだと思いますし。

ーある意味パートナーのような存在なんですかね。

岡田:そうですね。僕が良く言うことなんですけど、例えば、同じスキルのローディーが2人いたとして面白い人と面白くない人どっちと仕事したい?って。やっぱり面白い人じゃないですか?だから僕はそっちになれればなって。なんならちょっと実力がなくても面白いからこっちの人としたいって思ってもらえるようにしています(笑)。

ー悪巧みのような。

岡田:いやー、だって僕は師匠もいないし会社にも所属していない上に、8割以上独学でやっているので間違っていることが多々あると思うんですよ。なので同じ年のローディーとか見ていると僕よりも仕事できるなって感じるので、何で勝てるかって言ったら…醸し出すオーラ?そして、それを嘘と悟らせない話術?(笑)。

ーこれは書かない方がいいですよね?

岡田:いやいや!いいですよ?面白く読んでくれたらいいので。これを本当と捉えるかはあなた次第です!

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ーそうですね(笑)。スキルや信頼がないと、そもそも仕事もないですし。

岡田:でも、やっぱりみんな面白いですよ。あんまり寡黙にやっている人っていないですからね。

ー今はコロナ禍じゃないですか。そうなってから仕事の変化や気持ちの変化はありましたか?

岡田:仕事の変化でいうと、正直僕はすごく仕事をいただけている方です。それこそ今は怒髪天がツアーを回っていますし、koboreは去年の9月からツアーをやってくれているんです。前までは割と長期的な仕事の見方をしていました。ツアーファイナルはここだからスタートからゴールまでで良くなるような感じで仕事をしようと思っていたんですけど、今はちゃんと一本一本、今までの100%での仕事内容を、さらにもっと向上できるように頑張らないとなって思って。

ーありがたいことですね。

出来るだけ長くふざけながら楽しくやるっていうのが目標


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ー今日お持ちいただいている仕事道具についてお聞きしてもいいですか?

岡田:僕はローディーの中で工具箱って言われるものを4セット持っているんですけど、基本的に各担当しているバンドに預けちゃっていて。でもちょうどkoboreのものが帰ってきたので持ってきました。絶対に現場で必要なのはテスターですね。これがないと絶対に仕事にならない。他にはケーブルが断線したとき用の半田ごて。あとはニッパー、ハサミ、カッター、工具類などですかね。

ーそういうのも使われるんですね。

岡田:工具でよく使うのはドライバーくらいなんですけどね。源くんの大きい規模のツアーに同行するときとかは、心配性なのでもっと持っていきますけど、基本的には弦を変えるセットとドライバーがあれば何とかなります(笑)。

ー1つ1つの道具に対するこだわりとかはあります?

岡田:えーっと……ないです(笑)。基本的ハサミとかは100均でもいいです。でもチューナーに関しては精度の高いものを使います。ミュージシャンが使っているのはKORGだったりBOSS、今だとTC ELECTRONICのPolytuneってものが多いんですけど、それよりも精度の良いものでチューニングして渡すようにはしています。

ーちなみにそれはなんて言う名前なんですか?

岡田:これはSonic Researchってメーカーのやつですね。ストロボチューナーと呼ばれているものです。

ーなるほど。

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岡田:木工用ボンドに関しては僕はTitebondのORIGINAL Wood Glueがいいです。これはギターの修理とかにもちゃんと使われているボンドで強力なんで、持っている工具箱全部に入れていますね。あ、あとこれはローディーみんな大好きドライバーです!各種入っているんでプラスも一番細いやつから一番太いやつ、それにマイナスも入っていて、これはローディーあるあるですね。

ー初めて見ました!!

岡田:あとはこれです!これ。ギターのハムバッカーのピックアップ。アコギを袖中でチューニングする時に使います。アコギって外の音を拾っちゃうんですよ。穴が空いてるし。そうすると普通に刺しても全然違うチューニングで反応をしちゃうこともあるので、これで直接弦の音を拾うんです。そうすると外の音も一切干渉しないので。これもローディーみんな持っていますね。

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ーなるほど。そもそもあまりローディーや機材に対する知識がなかったので。

岡田:いやいや、誰だってそうじゃないですか?1番分かりにくい仕事だと思いますもん。

ーで、色々調べていてYouTubeも見ていたりしたんですけど、ガムテープ1つに対してすごく深掘りしている動画を見つけて。

岡田:あ、ONNMAYTさんですよね!?僕仲良しなんです。なので僕はそこからも仕事を頂いたりだとか、お仕事をお願いしていたりするんですけど。それよりもあのYouTube出たいんですよ(笑)。

ーあはは!(笑)。1つの道具や機材に対してすごく楽しそうに語っているのが印象的で。

岡田:あれはズルいですよね。ガムテだけであんなに引っ張るのは反則だと思います。

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ー面白いですよね。あと、ローディーをやられていると、全国にいろんなバンドのツアーで回っていると思うんですけど、美味しいお店とかたくさん知っているんですか?

岡田:ここ2年くらいでハンバーガーにすごくハマっていて、月2のペースで色んなところに食べに行っています。この前神戸で行ったハンバーガー屋さんがめちゃめちゃうまかったんですよ。Hyoe’s BURGERSってところなんですけど。これね、ハンバーガーもそうなんですけど、ポテトがめちゃめちゃうまくて。サツマイモなの?ってくらい甘かったのが衝撃でしたね。あとは青森のTHE RAMBLE BURGERも美味しかったです。ハンバーガーは夢がありますね。

ー良いですよね〜(笑)。では最後に、今後の仕事に対する目標は?

岡田:僕らの仕事って第一世代の人たちがまだいるんです。会社員だったら定年があるじゃないですか。でも僕らの仕事って今のところないんです。例えばローディーができない体になるのも何歳なのか分からないし、出来なくなったとしてその後みんなが何をするのかわからないんですけど、とりあえず出来るだけ長くふざけながら楽しくやるっていうのが目標ですかね。

ーじゃあ岡田さんよりも年上の方がたくさん活動されているんですね。

岡田:それこそ60歳オーバーの方もいますしね。

ー岡田さんはベテランなのかなと思っていたんですが。

岡田:いやまだ全然下っ端ですよ。きっと僕は中堅の下っ端くらいです。24歳からスタートって考えると遅いんですよ。歳だけはとるからキャリアと年齢の差が埋まらなくて。でも上手いことやっていかないとな。もうちょっと楽しみつつ、頑張りつつ、長くやれたらいいかなって。初めの話に戻りますけど、ほんとこれしか出来ないので、社会不適合者だと思いますよ。僕に限らず音楽業界の人間の多くが同じように音楽愛だけで生きているのかもしれないですよね。特にテクニカルなローディーやPAの人たちって。こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけどね(笑)。ただ、ここまでの話を信じるか信じないかは、読んでくれたあなた次第です!

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THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION ARCHIVE

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Vol.04:アヅマシゲキ
Vol.03:豊島”ペリー来航”渉 from Ikebukuro Live Garage Adm
Vol.02:Naomi Fujikawa aka FUJINAMI
Vol.01:Jun Yoshizaki from LIVE HOUSE FEVER