THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION Vol.04:アヅマシゲキ
SATANIC ENT.はライブハウスから生まれるシーンを紹介するメディア。では、ライブハウスではバンドやアーティスト以外にどんな人が働いているんだろう? ライブハウスの店長さんやスタッフさんはどんな経緯を経て、そこで働いているんだろう? 言わば"ライブ職人さんたち"に、そんな疑問をストレートに投げつけまくるのが本企画"THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION"! 登場するのはPA、照明、バンドのマネージャーさんやレコーディングエンジニア、ライブハウスシーンを取り巻く人を徹底追求!
第4回目は豊島”ペリー来航”渉さんからのバトンを受けて、バックドロップシンデレラなどのMVを制作する映像監督、吾妻茂樹さんに出演してもらう。映像ってどうやったら作れるのか、非常に気になるところ!
INTERVIEW
渉さんから言われた「これ、食えるぞ」がキッカケに
ーバックドロップシンデレラの渉さん(豊島”ペリー来航”渉)から紹介されたわけですが、簡単に自己紹介してもらっても良いですか?
アヅマシゲキ:映像監督です。今年で28歳ですね。作っているのは、ほとんどがMVなんですが、たまに楽器メーカーなどの映像も撮らせてもらっています。やはり音楽から派生したものが中心です。
ーなんかバンドやってそうな風貌ですよね。
アヅマシゲキ:あー……。バンドは昔も今もやっているんですよ。
ーやはり! バンド名は何ですか?
アヅマシゲキ:今やっているのは、あきらめきれずというバンドです。以前は自分が歌うバンドをやっていたんですが、今は映像の仕事がちょっと忙しくなってきちゃったんで、リードギターです。池袋のライブハウス、Adm(池袋 LiveGarage ADM)にお世話になっているんですよ。
ー渉さんが店長の池袋Admですね。それで繋がりがあったんですか?
アヅマシゲキ:そうです。というか、僕、もともと池袋Admのスタッフだったんですよ。大学の頃からAdmにバンドで出演させてもらっていて、渉さんにも面倒を見てもらっていたんです。そのままの繋がりで大学卒業後に、Admで働き始めたって流れがありますね。完全にホームのライブですし、今でもお世話になっているんで、本当に渉さんには頭が上がらないなって感じなんですよ。
ーなるほど。その頃はどういうジャンルの音楽を?
アヅマシゲキ:パンクですね。昔からパンクが持つ反骨精神であったり、アティチュードが好きなんです。
ーパンクに目覚めたキッカケは?
アヅマシゲキ:最初はやっぱりTHE BLUE HEARTSだったかな……。もう解散してたんですけど、中高生の頃にテレビで映像を観て存在を知り、アルバムを聴いてバンドを始めたような気がします。
ーでは、今1番好きなバンドと言うと?
アヅマシゲキ:ゆらゆら帝国がずっと大好きですね。あとはNUMBER GIRLやbloodthirsty butchersなど。僕がやっているバンド、あきらめきれずは、その辺りのバンドやeastern youthだったりが好きなヤツらが集まっているんですよ。
ーちなみに地元はどの辺りですか?
アヅマシゲキ:福島県の郡山市ですね。大学が千葉で、地元から出てきました。
ー郡山にいる頃はライブハウスには行っていました?
アヅマシゲキ:13歳くらいから通っていましたしバンドもやっていましたね。1番行っていたのは郡山ピークアクション(LIVE STAGE PEAK ACTION)ってところで。ひとりぼっち秀吉BANDというバンドが地元の先輩で仲が良いんですが、彼らとずっとライブハウスでお世話になっていました。
ーバンドを続けながら、どんな経緯で映像監督になっていったんですか?
アヅマシゲキ:大学までは全然映像に関係ないことをやっていたんです。その後、とあるメジャーレーベルに就職して働いていたんですが、そのときの部署が映像編集に関わるところだったんです。ちょっとだけ映像の編集ソフトを触らせてもらって基礎知識を本当に少しだけ身につけたんです。
ーレーベルでの仕事からスタートしたんですね!
アヅマシゲキ:はい。でも会社は3週間で辞めました。
ー短っ!
アヅマシゲキ:なんか違うな〜と思って。
ーそれからどうしたんですか?
アヅマシゲキ:で、渉さんに泣きついたんですよね(笑)。「何とかならないですかねぇ」って感じで。それで池袋Admで働かせてもらうことになったんです。そのうち、自分のバンドのMVを作って、渉さんにも観てもらったら「絶対に映像をやった方がいいよ。(この技術で)食えるぞ」ってアドバイスいただいたんです。多分、センス云々の話ではなくテクニック的な話で"食える"ってことを言ってくれたと思うんですけどね。そこから、じゃあ映像をやってみるか、と思い立ったのが映像監督を目指すことになるスタート地点です。
ーでは、渉さんがいたからこそ映像の仕事に向かったということなんですね。
アヅマシゲキ:そうなんです。だから、もう、正直なところ恩しかない感じがあります。
ー映像監督として仕事になっていった契機はどの辺だったんですか?
アヅマシゲキ:明確に実感した瞬間というのはないんですけど、昔、映像とバンド以外やりたくないなと思った瞬間があったんです。とりあえず映像をやってみようってところから始めたことなので、気付いたら今に至っていたような感じです。でも、やっぱりバックドロップシンデレラのMVを撮らせてもらったのはすごく大きくて。最初は手伝いとかで行かせてもらっていたり、特典のトレーラーとか作らせてもらっていたんですが、それを続けるうちにMVまで任せてもらえるようになり、周囲にも認知されていったのかなってイメージがあります。
※アヅマさん制作のバックドロップシンデレラの映像例
まずは映像をどんどん作ることが大切だと思う
ーでは、ここから具体的な仕事の内容ややり方を教えていただきたいのですが。映像制作で使っているアプリケーションは何ですか?
アヅマシゲキ:AdobeのPremiere(プレミア)ですね。その他で有名なのはFinal Cutでしょうね。
ー覚えるの難しいイメージがあるんですけど独学でいけるもんですか?
アヅマシゲキ:作る映像にもよると思うんですけど、僕の場合は何となく覚えてきました。独学でもできるものだと思いますよ。ただ、映像を作るために、色んなMVを見まくりましたね。映像を始めた頃は、こういう風にやるにはどうやるのかなとか探しまくっていて。その方法を調べまくって試して、作っている映像に反映させたりってことを繰り返していました。
ーでは、好きな映像監督は?
アヅマシゲキ:ずっと気になっていて参考にさせていただいているのは川口潤さんですね。eastern youthのMVなどを担当されている映像作家さんなんですが、すごく生っぽい表現が魅力的なんですよ。僕も最近では意識的に、その生感を重視して撮るようにしているんです。加工を少なめに抑えてアーティストの距離感をそのまま映像に出す感じというか。あえて作り込まずに提示する映像が僕は好きなんです。
ー映像制作を行う上でアヅマさんはどんな部分にこだわりを持っているのか教えてください。
アヅマシゲキ:繰り返しになるんですが、生っぽさですね。(MVなど映像は)作り物であるべきだとは思うんですけど、被写体そのものがそのまま表現されているのが、今では逆にシュールで面白いと感じるんです。今の映像はガチガチに固められたものばかりなイメージが個人的にあるので、そんな中で生っぽいものを提示したら、目を引くだろうという印象が強いですね。だから撮った映像をできるだけ、そのままの形で出すようにしています。ワンカットの映像を多用したり。カット割りしちゃうと空想感が出ちゃうので、もうAメロだけは全部ワンカットで撮って、カメラマンとアーティストがいるっていう絵を作ったりとか。そんな表現を最近やっています。
ーあえて時代の逆を行くスタイル?
アヅマシゲキ:そうですね。やっぱりパンクが好きだっていうのがベースにあるもので、常に反骨精神が出てきちゃうんですよ。なるべく人と違う逆方向を向きたがる性格なんだな、自分は。って映像を作りながら思っています。
ーそんな生っぽさが表現されているアヅマさんが制作したMVを紹介してもらっても良いですか?
アヅマシゲキ:こだわりを反映するのは、やっぱり自分のバンドが1番やりやすいので、あきらめきれずのMVなんですが今年の4月に公開した『渇き』を紹介したいと思います。これはコロナ禍の最中で撮影したんですよ。全部ワンカットで撮ったんですけど2倍速で撮影して、その後に2分の1の速さに編集して音源を合わせているんですが、お話しした生っぽさが出ているんですよ。
アヅマシゲキ:こういう生っぽいインディーズ感のある映像がめちゃくちゃ好きなんです。
ーこれから映像制作を始めたい人は、まず何があればやれますか?
アヅマシゲキ:始めるのは簡単だと思いますよ。今ならiPhoneとパソコンに編集ソフトをインストールすれば作れちゃいます。というか、iPhoneだけでも編集できますからね。ただ、せっかくならパソコンで作った方が面白いものが作れると思います。さっき話した渉さんに観せた映像っていうのも、会社を辞めて2週間くらい無職をしているときに友達とiPhoneで撮ったのをその場でゲラゲラ笑いながら編集したものだったんで、まずは映像をたくさん作るのがオススメです。映像に特化したカメラは高価ですが機材をたくさん整えるのを優先させるのではなく、とにかく撮って編集するのが良いと思いますね。
※アヅマさんの私物、撮影に使用するBlackmagic Designのカメラ。MV撮影の現場ではよく使われているものだそう。
ーちなみに、アヅマさんのアトリエ(撮影現場)がどんな場所なのか教えてもらってもいいですか?
アヅマシゲキ:ここを作ったのが1年くらい前でシェアオフィスにしています。デザイナーが3人、ムービースチールが僕を入れて3人います。カメラマンは僕が連れてきた子たちで、各々がフリーランスで仕事しているんですよ。こうして同じ場所にいると、何かを作る際にもパッとお願いできたりするし、一緒に制作できるのが楽しいですね。
ー映像制作をするうえでの楽しさはどんなところにありますか?
アヅマシゲキ:やっぱり現場ですね。撮っている最中も編集したり、どうするかを考えているときも楽しいんですけど、純粋に本当に楽しいって気持ちになるのは、撮影後にクルーと温泉に寄ったりとか(笑)。僕は割とそっちに重きを置いているかもしれないですね。作品は作品として別で考えるんですけど、現場ごとに場所が異なるので、今日は海だし、明日は山だって感じで、半分旅行に行くような感覚で色んな場所に行けるのは、映像をやるうえでの楽しさなのかなとは思います。
ー確かに。では、これまで制作してきた映像で記憶に残っているエピソードは?
アヅマシゲキ:以前、打首獄門同好会のMV「YES MAX」を撮らせてもらったことがあるんですけど、そのときに爆破のシーンを撮らせてもらったんです。で、爆破の準備をしていったんですけど、その現場で「その予算じゃ全然爆破にならないよ」って特効のスタッフさんに言われて。結果的に爆破のシーンを4回撮って想定していた予算の2倍分かかったのは、すごく記憶に残っていますね。
ーやっぱりお金かけないと爆破にならないんですか?
アヅマシゲキ:そうみたいです。炎が小さくなるらしいんですよ。
ーでは、仕事と関係ない話も教えてください。お酒は飲む人ですか?
アヅマシゲキ:お酒は全部好きです。毎日ずっと1人で泥酔していますね。多分、周りには知られていないと思うんですけど酒ばっか飲んでます。
ー好きな食べ物は?
アヅマシゲキ:古くてちょっと入りにくいような定食屋で食べる生姜焼きとか。
ーなかなかヤバい好物ですね。
アヅマシゲキ:美味しくないけど情緒があるものが好きですね。エアコンの効いていない定食屋で出てくるカピカピのご飯の生姜焼き、あれですね。
ー自分を何かものに例えるなら?
アヅマシゲキ:結構ぼーっと落ち着いているので、木ですかね。僕の名前が木なんですよ。漢字が吾妻茂樹で、生茂るに樹木の樹で。大らかに育ってほしい的な話を親からされた記憶があります。感情の起伏もあまりないですし、現場でもずっと同じ感じで、あがるときだけあがるようなタイプなんで、木かな、と。動く木ですかね、僕は。
ー大木系ですか?それとも細長い系ですか?
アヅマシゲキ:細長いやつの塊かな。大木ではないと思います。
ーわかりました。最後にアヅマさんが今後やりたいことを教えてください。
アヅマシゲキ:最近絵を描き始めたりしているんです。今まではMV制作をする際はイメージをデザイナーやイラストレーターに共有して一緒に作る作業をやってきたんですけど、そういう一連の作業、全部を自分が経験しておくことで、今後協業するときにも活きてくるかな、と思っています。 https://www.instagram.com/p/CDESkUipMO0/?utmsource=igwebcopylink ※最近描いているという絵。
ーありがとうございました!
アヅマシゲキ
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あきらめきれず
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THE CRAFTMAN SATANIC CONNECTION ARCHIVE
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Vol.08:大塚 智昭
Vol.07:柴田 恵理
Vol.06:岡田 聡
Vol.05:西槇 太一
Vol.04:アヅマシゲキ
Vol.03:豊島”ペリー来航”渉 from Ikebukuro Live Garage Adm
Vol.02:Naomi Fujikawa aka FUJINAMI
Vol.01:Jun Yoshizaki from LIVE HOUSE FEVER