SCENE by Photographer/Edit. Kohei Suzuki 05

2021/ 04/28 18:00

ライブハウスを記録するシーンの第一線で活躍するライブカメラマンたち。彼らがいなくては、その現場で何が起こっているのかが歴史として残らない。
SATANIC CARNIVALにおいても"SATANIC PHOTOGRAPHERS 写真展"が展示され、写真を楽しむことができる。だが、その1カット1カットには、フォトグラファーたちの思いがある。そのメッセージを写真だけではなく言葉でも知りたい。
この企画では、そんなシーンに関係するフォトグラファーに、この1枚の写真に、どんな思いがあるのか。語れる写真を紹介してもらう。
企画タイトルは"SCENE"。ライブ写真に限らず、風景や生き物、人や場所、彼らが撮影した写真群とメッセージを伝えていきたい。
今回はKohei SuzukiのSCENE、第5弾。テーマは"黒　影"。

SCENE by Photographer Edit.Kohei Suzuki 05
黒　影
昔から自分は黒が好きだ。
カメラマン、裏方としての黒子の黒ももちろんなのだが、
単純に黒がカッコいいと思っている。

写真を始めた時、自分はモノクロ写真から始めた。
モノクロの写真とは周知のとおり、白と黒の階調のみで表現した写真である。
今でも、写真の内容に焦点を当てたい時、色の情報を減らす為にモノクロにする時がある。

人が見える色は条件が整っていれば750万色、
通常の状態では187万5000色というのが見える範囲らしい。
こんなにも多くの数があるのに何故黒なのだろうか??

自分が黒を考えた時真っ先に浮かぶイメージ、
それは「影」だった。

写真は光があるから撮れる。
光を捉えるのが写真ではあるが、光があるのと対に影がある。
光遊び＝影遊び、だと思っている。

光に溢れた写真ももちろん美しいのだが、
自分は、暗い中に浮かび上がる様な小さな光を捉えた写真が好きな様だ。
これは、なんとなく音楽や他の物事の好みにも言えることな気がする。
ポジティブ、光が前面な物より、
ネガティヴ、影が前面な物に惹かれてしまう。
その暗く陰った中に見える物が、か弱くも力強く感じる。

暗闇の中にストロボ照明で一瞬見える姿、
暗闇の中にスポットライトで現す姿、
強い光の中に作り出される影のシルエット。

前にこのコラム連載で、構図についての回の時に「見えていなくてもよいのかもしれない」と書いた事があった。
黒、影についても同じ事が言えるかもしれない。

ここにも見えていないからこその想像がきっとある。
そして影があるからこそ、明るくなった時の眩しさがより強く感じるのだろう。

自分にとっての黒は、他の色を鮮やかにするための黒。
そして自分もそんな「黒」のようになりたいのかも知れない。
やはり黒子の精神が好きな様だ。

人間の目は意外と優秀で暗闇に慣れると見えてしまう。
だからこそ、写真の中だけでも黒は黒であって欲しい。

あの明るい街並みから薄暗いライブハウスの階段を降りていく様な、
そして、まだまだ終わりが見えないこんな暗く感じてしまう世の中でも、
か弱くも力強いものを信じて活きたい。

Photographer Profile
鈴木公平

フォトグラファー。宮城県塩竈市出身仙台市宮城野区育ち。橋本塁に師事し、ファッションメディアを撮影する仕事を経て現在はフリーランスとして活躍中。

https://www.suzukikohei.com/
https://twitter.com/kouhey0622
https://www.instagram.com/kouhey0622/

SCENE by Photographer ARCHIVE