INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.14: JasonAndrew

 photograph by Ryohei Obama text by Teneight


連載企画"Who's Next"はSATANIC ENT.を編集するスタッフが、今現在気になっているけど、まだSATANIC ENT.ではピックアップしていない次世代のバンド・アーティストに会いに行き、ルーツや活動、それを取り巻くカルチャーなどを一方的に紹介するというシンプルかつ偏愛極まりない企画。

第14回目はレペゼン横浜B.B.STREETのJasonAndrew。まだ20代前半の超ユースバンドだ。王道メロディックハードコアパンクをベースに、ハードコア等、様々なジャンルをミックスさせ、オリジナルのパンクを表現し続けている。



Left to Right:タカギユウスケ(Gt&Cho)、スギハラカイト(Dr)、スダカズマ(Gt&Vo)、ホンダリョウセイ(Ba&Vo)



メロディックパンクを主軸に
様々なエッセンスを取り入れたバンド



ーまず今のメンバーが集まった経緯は?

ホンダリョウセイ:俺とギターのタカギがオリジナルメンバーで高校の同級生です。入学当初、LINEのトップ画をGreenDayにしているヤツがいて、『こいつ誰だ!?』って思ったのが、タカギでした。その当時から俺もGreen Dayが好きだったのでバンドやろうって誘ったんです。最初はHi-STANDARDのコピーから始めて、紆余曲折あり、カイト(スギハラカイト)が3人目のドラマーとして加入しました。

スギハラカイト:もう3年くらい経つね。

ホンダリョウセイ:で、スダカズ(スダカズマ、以下スダカズ)なんですけど、こいつはもともと俺らのライブに来ていたお客さんだったんですよ。ステージに上がって勝手にシンガロングするようなやつで。

ーそうなんですね!

スダカズマ:B.B.STREETに来たとき、THE FOREVER YOUNGとJasonAndrewが対バンをしていて、そこで初めて観たんです。その後何度もライブに行くようになり、リョウセイくんと仲良くなっていきました。当時は別のバンドを組んでいて、Green Dayのようにギターボーカルで自分がセンターを務めるっていうことしか眼中になかったんですけど、そのバンドもあんまり上手くいかずに終わっちゃって。

ホンダリョウセイ:で、スダカズが所属していたバンドのライブに誘われて、観に行ったんです。そこで、こいつ意外とイケるなって思って。それでJasonAndrewに誘いました。

スダカズマ:誘われたときは1ヶ月くらい悩んだんですよ。自分がセンターに立ちたいけど、入ったら横じゃん……って感じで(笑)。加入する前には一応オーディションもやったんですよ。

ホンダリョウセイ:全然弾けてなかったけどね。

スダカズマ:でも同じタイミングでオーディションに来ていたカイトも、あんま出来てなかったじゃん!

ホンダリョウセイ:まぁ、逆にみんなそこそこに出来てないからいいやって(笑)。

スギハラカイト:とりあえずライブやるかってね。

ホンダリョウセイ:それで、B.B.STREETでライブをスタートさせて今に至ります。

スギハラカイト:そういえば、スダカズが俺らのことを知ったのも、JasonAndrewがGreen Dayの曲名だったからなんだよね?



スダカズマ:そうそう。ベスト盤にしか入ってないくらいマイナーな曲だよね。JasonAndrewっていうのは、マイク(マイク・ダーント Green DayのBa&Cho)の親友の名で、その人に捧げた曲らしくて。

ーなるほど。では、メンバーそれぞれが影響を受けたアーティストは?

タカギユウスケ:初めてライブに行ったのが2012年のサマソニだったんです。そのときにGreen Dayを初めて観て、メロディックハードコアパンクにハマっていきました。それに、横浜のシーンも好きです。特にOVER ARM THROWが好きですね。

スギハラカイト:学生の時にメロディックハードコアパンクにハマったんですけど、そのキッカケになったのがDizzy Sunfistでした。その頃は「Shooting Star」のMVが出たタイミングで。みんなはHi-STANDARDが入りだと思うんですけど、当時は全然知らなかったですね。そこから、ディグってHi-STANDARDやGreen Dayとかを聴くようになっていきました。

スダカズマ:僕はですね、母親がケニア出身なんですけど、幼少期から自宅で洋楽が流れていたんです。それで、中学の頃に観たGreen Dayのライブ映像が刺さって。そこからTHE OFFSPRINGやSUM41などのバンドを知っていきました。とにかく金がなかったので、ブックオフとかで安くなってる昔の名盤CDとかを買い漁っていたんですよ。だから、昔のバンドの方が好きです。国内のバンドだと、最初はTHE BLUE HEARTSとかも聴いていたんですよ。でも、パンクというかロックだと思って聴いていました。でも、Hi-STANDARDに出会って、これはパンクだ……って。そこから日本のメロディックシーンを知って、SHANKとかDizzy Sunfist、WANIMAとかをどんどん聴くようになっていきました。

ホンダリョウセイ:俺は親父がBOØWYを聴いていたので、自然とBOØWYや氷室京介を聴くようになっていきました。ある日、氷室京介の特番でGreen Dayが流れていて。なにこれ、演奏が下手じゃんって(笑)。

スダカズマ:なるほどね(笑)。

ホンダリョウセイ:だから、昔は苦手だったんですよ。でも、親父が「バンドをやりたいならこういうの聴け」って言ってくれて、聴き始めたらハマっちゃったんです。なので、Green Dayがパンクの入口ですね。それで、実家の隣にバンド夫婦が住んでいて、「Green Dayが好きなんです」って話したら、Hi-STANDARDのCDをギターと一緒に貸してくれたんです。そこでHi-STANDARDを知ったんですよ。すぐには理解できなかったんですけど、どんどんハマっていって。いつのまにかPIZZA OF DEATHのバンドが大好きになっていました。その後にライブハウスで偶然観た日本のハードコアバンドのFACECARZにも衝撃を受けて、ハードコアも好きになりましたね。

―それが合わさって今のJasonAndrewがいるんですか?

ホンダリョウセイ:そうですね。エッセンス的にはバラバラですね。

スダカズマ:主軸はメロディックハードコアパンクで、そこに付随して、いろんなことを試しています。

―今日の撮影場所、B.B.STREETもバンドのルーツにあるんですか?

ホンダリョウセイ:そうですね。俺がここで働いてるのもあるんですが、自分らのことを育ててくれたジュンジさんって人がA.O.Wっていうハードコアバンドをやっていたんですけど、その人たちからライブハウスのいろんなことを教わったし、高校生の頃から良いブッキングライブに誘ってくれたりしてもらっていたので、完全にルーツにありますね。他所のライブハウスに行ったときに、何も言っていないのに「BBのバンド?」って聞かれたりするんですよ。

スダカズマ:俺らのライブを観ただけで、なんとなくBB臭がするんだろうね。

―作詞作曲について、作曲は誰がやられてるんですか?

スギハラカイト:俺とスダカズが作曲して、編曲はJasonAndrewって感じですね。

ホンダリョウセイ:作詞は俺とスダカズがやっています。

スダカズマ:ベースボーカル&ギターボーカルなので。

―曲のバリエーションも豊富ですよね?

ホンダリョウセイ:そうですね。あとは、関わりのあるバンドのジャンルがバラバラすぎて。そういうとこからインプットできているのかな。あまりジャンル感がないっていうか。

―歌詞にはどういったメッセージを込めているんですか?

ホンダリョウセイ:俺の場合は、日常の出来事に対するヘイトですね。怒り狂ったことをパッと殴り書きしています。なので、後から読み返すと自分の歌詞に共感できないときもあるんです。ただ、その時々の気持ちを忘れないために、それを詞に起こしている感じです。

スダカズマ:俺も世の中に対するヘイトです。パンクって、そもそも政治とか世の中に対する不満や意見を、自分の言葉で発信する音楽じゃないですか。そういうものを聴いて育って納得させられてきたんで。だから、それに倣っている感覚があります。あえて汚い言葉で表現したり。普段からそういう話し方をする人間ではないんですけどね(笑)。

ホンダリョウセイ:でも、自分たちにしか言えないような言葉を使った結果、万人受けしないような汚い表現であったとしても、それが俺ららしいってことなんじゃないかな。

スダカズマ:そうそう! めっちゃわかる! 良いこと言うね(笑)。

コロナやそれを仕切る政府に対してのアンチテーゼ


ーでは、コロナ禍になってから心境の変化だったりはありましたか?

ホンダリョウセイ:B.B.STREETで働いていて思うんですけど、うちの店長が一昨年は、ほぼ鬱になるくらい追い込まれていて。そこまでの状況にしたコロナが憎いし、そうかと思えば、電車には、めちゃめちゃ人がいるわけじゃないですか。「この状況は何なんだ!?」って。ライブハウスは人を入れちゃダメって言われて、そこで働いている人は心を痛めて病んでいるのに、と思うと、やり場のない怒りがどんどん湧いてきたんですよ。それで、こうなったら、もっとライブハウスを盛り上げなきゃいけないって考えに至って、今後は毎月自主企画ライブをやってみたいと思うようになったんです。若いバンドをもっと巻き込んだ企画を実現することが出来たら、それが、B.B.STREETへの1番の恩返しなのかなって。そんな感じで、ライブハウスに対する想いが増していきました。

 

ー新曲についてお聞きしてもいいですか?

ホンダリョウセイ:テーマは、今話したように、コロナや、そこに対する政府の対応へ向けたアンチテーゼです。ライブハウスで思うように遊べない世の中で、僕らみたいな一般の社会からはみ出した人間はルールやマナーを守っているのに、なぜ、そうではない場所も当たり前のように存在しているのか、そういう矛盾から生まれた怒りを込めています。それを皮肉って『そしたら僕らも好きなようにやらせてもらいます』といった感覚をリスナーに感じ取ってもらえたらいいなと思いますね。コロナ対策も大切だし、現状については理解しているけれど、本質を見失っているんじゃない? っていう問題提起を含めた曲です。なので、MVでも現代では開催しづらいパーティーの様子を描いているんです。



ーそういう意図が込められているんですね。

ホンダリョウセイ:はい。それに、今はモッシュ・ダイブがNGじゃないですか。その状況を友達のTrack’sは踊りに置き換えてプラスに変換していったんですよ。それを観て、JasonAndrewにとっての踊りって何だろうなって考えて作った曲です。



スダカズマ:そうですね。メロディックハードコアパンクを主軸におきつつ。

ホンダリョウセイ:今後は俺らの代名詞になるんじゃないかなって曲です。っていうのも、今まで俺らがやっていたことを全部ミックスさせて、なおかつミクスチャー的な要素も入れた曲なので。

スダカズマ:とりあえず、今までやってきたジャンルを全部ギュッとまとめた曲だよね。

―B.B.STREETとの関係性も振り返ってもらえますか?

ホンダリョウセイ:ここを拠点にするようになったのは6年前くらいからです。その当時から入った瞬間にタバコ臭くて(笑)。そんなライブハウスは少なかったし、壁はグラフィックだらけで異様な雰囲気があるし。それに、このライブハウスはフラッと来れるような居心地の良さがあるんです。

スギハラカイト:引き寄せられるよね。

ホンダリョウセイ:スタッフもフラットに話してくれるし、「一緒にテキーラ飲もうぜ~」ってことを、スタッフやPA、照明全員巻き込んでやったりするんですよ。そういうことも含めてめっちゃアットホームというか。

スダカズマ:アットホーム感やばいよね。

ホンダリョウセイ:このバンドを育ててくれたジュンジさんが店長だったときに、すごく良いバンドと対バンをさせてもらったりして、このライブハウスが俺らのことを1番フックアップしてくれたんですよ。

スダカズマ:それは間違いない。

―繋がりも深いんですね。

ホンダリョウセイ:あとこのライブハウスは、スタッフがほとんどバンドマンなんです。だからこそ、俺らにも親身になってくれる。あんまりこういう場所ないですよね。

スダカズマ:音楽のことがわかっている人たちがいるハコって感じですね。

ホンダリョウセイ:音楽学校じゃないですけど、色んなことを教えてくれるし。

スダカズマ:楽器屋よりも、いろんなことを学べるよね。

タカギユウスケ:そう考えるといい場所だな~。

―では、今後目指していくところは?

スダカズマ:世界です。

―言い切りましたね。それはメンバーの共通認識なんですか?

ホンダリョウセイ:ちょっと行き過ぎてますけどね。

スダカズマ:俺が歌詞を英語にしたいって想いは全部そこにあって。俺の母親の友達は、今ニューヨークに住んでるんですけど、そういう友達も含め、世界中の人たちに俺たちの歌っている内容が伝わったら嬉しいし、海外の友達にも届くような音楽にしたくて。

ホンダリョウセイ:俺の場合は、このメンバーで長く音楽を続けられることが目標ですかね。

タカギユウスケ:僕はフジロックに何度も行っていてすごく好きなので、いつか出たいなと。

スダカズマ:フジロック出たいね!

スギハラカイト:当面の目標は、SATANIC CARNIVALとかの日本のデカい名フェスイベントに出ること。そして、日本では浸透しづらいジャンルだと思うメロディックハードコアパンクを、もっと世間に広げて、いろんな人に自分たちの音楽を聴いてもらいたいですね。JasonAndrewが、誰かにとってメロディックハードコアパンクを聴くキッカケになれたらいいっていうのが1番の目標ですね。

スダカズマ:ポップスに負けないくらい聴きやすい歌も作って発表したい。それで、気づいたら、「あれ? メロディックハードコアパンクってこんなに流行ってたっけ?」って世界にしたいですね。

ホンダリョウセイ:スダカズはよく喋るなあ本当に(笑)。






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