INTERVIEW

Who’s Next by SATANIC Editing Room Vol.31: トップシークレットマン

SATANIC ENT.を編集するスタッフが気になるバンドをピックアップする連載企画"Who's Next”。次の時代を担うアーティストの考え方を紹介していきたい。

今回はSATANIC PARTY 2024に出演する、親にバレたくないバンドことトップシークレットマン。注目の若手であり、ハイパーポップを織り交ぜたバンドの音が特徴的。ここでは、バンドを代表して、しのだりょうすけ(Vo)と正義(Dr)の2人にインタビュー。

Photo by Takao Ookubo, Text by Ryo Tajima(DMRT)

現在はハイパーポップ×メロディックハードコアって感じの音楽性に

ーいきなりですが、トップシークレットマンの成り立ちについて教えてもらえますか?

しのだりょうすけ:最初は3ピースバンドで、高校で仲が良かったメンバーで始めました。なんやかんやあって、自分以外のメンバーは抜け、メンバー募集をかけた結果、ねぎし(Ba/ねぎしのはん)が入り、そこで入ったメンバーもなんやかんやあって、いなくなり、あれやこれやしているうちに今の5人に落ち着いたという感じです。

正義:自分はもともと、しのだと友達で3ピース時代のライブを観ていたんですよ。「カッコいいな」って思いつつ。それで、トップシークレットマンがしのだのソロプロジェクトになったとき、たしか下北沢でばったり会って、自分が酔っ払っていたこともあって「ドラム抜けたんやったら叩かせろやぁ」って話をして本当にメンバーになっちゃいました。

ーふむふむ。ちなみに、3ピースバンド時代と今では音楽性が異なりますよね?

しのだりょうすけ:そうですね。最初はグランジみたいなことをやりたかったんです。その後、青春パンクにハマり、ライブハウスでハードコア大好きおじさんと知り合って、ハードコアにのめり込んでいきました。

ーどんなハードコア大好きおじさんだったんですか?

しのだりょうすけ:KARATE KIDっていうバンドをやっている人で、主にファストコアをやっていて、ハードコアを教えてもらい、RAZORS EDGEやIdol Punchなどが大好きになっていったんです。

正義:(RAZORS EDGEやIdol Punchが)最高やな。

しのだりょうすけ:それでショートチューンの音楽をやっていたんですけど、今ではハイパーポップが好きになり、ハイパーポップ×メロディックハードコアみたいな感じになりました。最初の頃と比較すると、ガラッと変わりましたね。2019、20年頃にバンドを始めて、今の音楽性になったのは、この1、2年ってところです。

ーせっかくなので、今のトップシークレットマンに繋がる2人のルーツのバンドも教えてもらえれば!

しのだりょうすけ:バンドに繋がるルーツですか。まず、正義と俺が違いすぎるんですよね。バンドの曲は、僕がデモを作り込んで完成させて、それをメンバーに弾いてもらうって感じなんですよ。だから、トップシークレットマンの音楽には自分のルーツしか反映されていなくて。

ーあ、そういう曲作りをされているんですね。じゃあ、しのださんのルーツ・バンドというと?

しのだりょうすけ:まずは、NIRVANAとPEARL JAMを好きになってグランジがやりたくて、NIRVANA路線の曲に日本語詞をあててやろうと思ったんですよ。そうこうしているうちに銀杏BOYZにはまり、青春パンクをやりたくて「ひとみちゃん」って曲を作ったんです。その後に、KARATE KIDを経て、海外のバンドも含めてハードコアを聴き、次は何を聴こうかなーなんて思っていた頃に、100 gecsに出会ったんです。そもそも楽器を始めたきっかけはマキシマム ザ ホルモンで、そのときに初期衝動を揺さぶられたわけですけど、100 gecsを聴いたときには、その衝動を再び感じたほどの衝撃がありましたね。そこから、ダリアコア、ハイパーフリップまで好きになっていったんです。

正義:僕も小学校の頃からマキシマム ザ ホルモンがめちゃくちゃ好きでした。あと、神聖かまってちゃんとか。その辺りがギリギリしのだと共通のルーツで、この1年くらいはすごくたくさん音楽を教えてもらっています。

しのだりょうすけ:正義は勢いのある日本の音楽が好きだよね。ENTHやSHANKだとか。

正義:そうだね! 2ビートの音楽が好きになったのがWANIMAなんですよ。このビート、カッコいい! ってなって、高校のときにエルレ(ELLEGARDEN)が再始動してハマり、あとは地元が近いこともあってdustboxも大好きになり。

しのだりょうすけ:だから、今もフレーズによってはフィーリングが日本っぽいっていうか。そう感じることが多いね。

ーにしても、トップシークレットマンのように、バンドのサウンドを軸にしながらハイパーポップなどの要素を入れるバンドって今までになかったと思うんですよ。逆は海外も含めてよくあったと思うんですけど。

しのだりょうすけ:たしかに、自分もあまり見たことがないですね。メタル系のバンドはトラップだとかEDMなどのクラブ系サウンドとも親和性が高いじゃないですか。それ自体が1個のテンプレになっているのかもしれないですけど、そうじゃない形のスタンダードを自分たちが打ち立てて、時代をぶち壊せたらいいんじゃないか。そう思って2023年にアルバムをリリースしようとしたらコンプラが引っかかって流通できなかったんです。

正義:流通だけじゃなくて個人での通販もできなくて。販売停止をくらいまくって。

しのだりょうすけ:仕方がないので手売りでライブ会場で販売して1000枚売りました。

ー手売りで1000枚ってすごいと思います。ちなみに、普段から一緒にやるバンドだとか。企画ライブを呼び合うような仲間的なバンドはいますか? 自分たちのシーンというか。

しのだりょうすけ:最近は音楽性も相まってクラブシーンの友達がすごく増えてきたんですけど。東阪でツアーをやったときもlilbesh ramkoと一緒に回りましたし、あまり特定のバンドとやるって感じでもないかもしれないです。

正義:しのだは良い意味で流動的だから、ずっと同じ友達と一緒にいるってよりは、変化しながらって感じだよね。これからも音楽性も含めてどんどん変わっていくんだろうなって思うよ。

しのだりょうすけ:その音楽性の変化と共にいろんなところに友達が増えてきて、シンプルにめちゃくちゃ楽しいです。自分もただの音楽ファンですし、普通に音楽を聴いていた人たちと同世代・先輩・後輩問わず、自由に会えるのは嬉しいっすね。

正義:自分的には、友達が増えていろんなところで開催される飲み会に参加できるんで嬉しいし楽しい限りです。

 

革新的な表現を続けて海外にも受け入れられる存在になりたい

ーSATANIC PARTYはSATANIC CARNIVALのパーティ版なんですけど、このイベントに対してどんな印象がありますか?

しのだりょうすけ:他のフェスと比べると、すごくDIYな精神性を持っているイベントだと思いますね。音楽性問わず、そういうアティチュードを持っているアーティストが出演しているイメージがあります。どこかに所属しているとかではなく、そんな風に活動の内容やバンドの方向性を見てくれていると感じますし、そんなパーティに呼んでもらえたのはすごく嬉しいです。ルーツにハードコアがあるくらいですし、DIYという精神性にも憧れがあるんですよ。だからレコーディングもMVも全部自分でやっていますし。このまま頑張ってカーニバルの方までいけたら完璧! って思います。

正義:完璧だね。SATANIC PARTYにもSATANIC CARNIVALにも、みんな出るべくして出ている感じがあるんですよね。呼ばれたからビジネスとしてやりますっていう感じが全然しないというか。パーティー、カーニバルっていう名前がダテじゃないというか。ガチでパーティーだし、カーニバルしている感じがします。俺、パーティー大好きなんで、本当に楽しみなんですよ。

しのだりょうすけ:オファーをいただいたときも、シーンに対して新しい風を吹かせる存在を探している、といったことを言っていただいて、もちろんビジネス的な要素もあってのことで、そこがないと成立しないことではあるんですけど、その中でも信念があるように感じたし、そこで俺たちの存在が引っかかったっていうのは、すごく嬉しかったんです。俺ら、普通のフェスにはあまり出られないと思うんですよ。業界で悪いウワサしかないし(笑)。

ーちゃんとバンドを見てブッキングしている感じがあったという?

しのだりょうすけ:そうですね。地に足つけてブッキングしているんだなって。主催しているのはピザ・オブ・デスなわけじゃないですか。やっぱり信頼できるなって思ったし、それがすごく嬉しかったです。

ーでも、これを機に大型の音楽フェスにどんどん呼ばれるようになるかもしれないわけですから。JーPOPのアーティストが大勢出演する野外フェスだとか。

しのだりょうすけ:もしそうなったら業界が変わるんじゃないですかね、悪い意味で。<日本終了のお知らせ(オワタ\(^o^)/)>みたいな。

ー絵文字!

正義:でも、誰かに言われたのか、自分で思ったのか忘れちゃったんですけど、本当に2、3年したら、「しのだに憧れて音楽始めました」みたいな年下がすごく増えてくるんじゃないかって思いますね。

しのだりょうすけ:すごい。今の発言、超ディレイかかってたよ。

正義:背景、黒でな。

しのだりょうすけ:今、いろんな音楽性のバンドがたくさん出てきていますけど、多分、この2、3年くらいで、僕たちとか同世代の20代前半くらいのシーンは一旦決着つくのかなって、ちょっと思っています。後発的に出てくるバンドもいると思うので、どうなるかはわからないんですけど。

ーでは、トップシークレットマンとしては、そこのシーンで一歩前に出て、シーンで存在感を高めていくことが今後の目標になりますか?

しのだりょうすけ:それができればラッキーだと思いますけど、僕は海外の音楽を多く聴いてきたので、海外のシーンに足を突っ込んでいくのが夢ですね。MELT-BANANAも大好きで、その活動には憧れます。あんな風に、根本にハードコアがありつつ、実験的で面白いことを表現し続けて、革新的なことを起こしながら、海外のシーンにも受け入れられているアーティストはすごいと思うし、そんな風になっていきたいと思っています。

トップシークレットマン
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SATANIC PARTY https://satanicparty.com/

トップシークレットマン 18:30 @ duo MUSIC EXCHANGE

 

Who's Next by SATANIC Editing Room

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Vol.29 Good Grief
Vol.28 View From The Soyuz
Vol.27 ジ・エンプティ
Vol.26 carabina
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Vol.24 Maki
Vol.23 lilbesh ramko
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